女王陛下のお婿さま
 自室の机に並ぶ書類を前にして、クラウスは大きなため息をついた。並んでいるのはみな、パレン公爵宛の請求書だ。

 クラウスの実家パレン家は、アルベルティーナの城から馬で半日ほど離れた所にある。街から少し外れた緑の多いのんびりとした場所だ。

 今まではこの屋敷には叔父夫婦が住んでおり、パレン家の屋敷と資産を管理してくれていた。しかし……

 クラウスは書類を束ね引き出しへしまうと、もう一度ため息をついた。

 この請求書は全て、叔父が散財して作ったものだった。

 クラウスが長らく城へ行っている間に、叔父は管理を名目にして両親が築いた資産を使い尽くしていた。それだけでは飽き足らず、高額な借金まで作っていた。

 パレン公爵家名義で持っていた土地も、この屋敷を残して全て売り払われ。それでも足らず、最近では叔父は度々クラウスを屋敷に呼び、金を無心していたしまつ。

 もちろんクラウスにも金など無い。全て叔父が管理していたのだから。

 終いには、アルベルティーナに話を通せと要求してきていた。恐れ多くも女王陛下に、自分が豪遊して作った借金を肩代わりしてもらおうと。

 幼馴染みだが女王でもあるアルベルティーナに、そんな迷惑は掛けられるはずがない。クラウスはずっと断り続けていたのだが……

 とうとう、首が回らなくなってしまったのだろう。叔父夫婦が夜逃げ同然で姿をくらましたと、クラウスが屋敷の執事から聞いたのは、あの舞踏会の翌日だった。

 幸い、というか何というか……叔父は公爵の証の勲章を屋敷に残していた。もっとも、こんな物を持っていては、身分を隠していてもすぐにばれてしまう。借金の督促から身を隠すには、邪魔な物でしかなかったのだ。
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