女王陛下のお婿さま

 そしてクラウスは決めた――パレン家を継ぐと。

 ずっと拒んでいた事だった。恩義を名目に城に残り、叔父の散財も知ってはいたが、こんな事になるまで黙認してしまった。

 だがもう、逃げる事は出来ない。両親が残してくれた家を続ける為には……

 パレン公爵の家と爵位を継げば、必然的に叔父がパレンの名で残した借金も継ぐ事になる。全てを放棄してしまう事も出来るが、それは公爵という地位も捨てただの青年になるという事。

 借金まみれの名ばかりの公爵か、名も無きただの貧乏青年か。

 どちらにせよ、こんな自分では、この国の女王であるアルベルティーナの側にはもういられない。彼女を守ってやる事も出来ない。

 だからクラウスは、城を去ったのだった。

 はあ、とクラウスはまた何度目かのため息をついた。それと同時に扉が叩かれ、侍女が来客を告げた。

 今のパレンの屋敷に来る者なんて、借金の督促しかない。侍女が取り次いでしまったので居留守も使えず、クラウスは仕方なく応接室へ向かった。

 しかしそこには、思わぬ人が待っていたのだ。

「――よお、クラウス。元気か?」

 応接用のソファにどっかりと腰を沈めていたのは、なんとファビオだった。ソファの隣に老齢の従者が一人立っているだけで、城からお忍びで来たような、そんな雰囲気だ。

「ファビオ王子、どうしてこちらへ?!」

「侍女長のマイラに場所を聞いてな、こっそり来てやった」

「いえ、そういう意味では……」

 どうしてパレンの屋敷の場所が分かったのか、そんな事を聞きたかったのでは無い。何の用で来たのかと、クラウスは問いたかったのだが。

 ファビオにしてみればクラウスは、隣国の王子と侍従というだけの間柄だ。そんな者が辞めたからといって、わざわざ実家を訪ねてくるのは普通では考えられない。
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