女王陛下のお婿さま
 クラウスが戸惑いながら向かいのソファに座ると、ファビオは侍女が先に出していたお茶をゴクリと飲んだ。

「俺は面倒なのは不得手だから、単刀直入に言う。今日はお前に確認に来たんだ」

「確認、ですか……?」

 ファビオはお茶をゴクゴクと飲み干すと、少し乱暴にカップをテーブルに置いた。

「俺はアルベルティーナ女王と、結婚する事になった」

 ファビオのきっぱりとした言葉に、クラウスは一瞬息が止まりそうになった。そして平静を装う様にティーカップに手を伸ばしたが、その手は震えてしまい、慌てて手を引いた。

「そ、それは……おめでとうございます」

 口からやっと絞り出した言葉。だが、ファビオの目は見られなかった。

「まあ急な事だが、今回の騒動の件で女王陛下を救ったと俺の株も上がって、アルベルティーナの父君にいたく気に入られてな。話がトントン拍子に進んだんだ」

「そうですか……」

 クラウスは、まるで自分の目の前に霧がかかってしまったかのように感じていた。ファビオの声も、何処か遠くから話しかけられているように聞こえる。

 代わりに心臓の音が、嫌に近くから響いていた。

「それで、確認に来たんだ」

「確認……?」

 ファビオはそこまで言うと、ソファの背もたれに体を預け足を組んだ。

「――本当に、いいのか?」

「おっしゃる意味がよく分かりませんが……」

 クラウスの答えに、ファビオは足を組んだまま呆れたように大きなため息を吐いた。

「俺は面倒なのは嫌いだと言ったはずだ。本当は全部分かっているくせに、どうしてお前は嘘をつき続けるんだ」

 ファビオの金色(こんじき)の瞳が、クラウスを貫くように見つめていた。その力強さに、思わず目を背けた。

「う、嘘など、ついてはおりません……」

「それも嘘だ。この俺を騙せると思っているとしたら、俺も舐められたもんだな」
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