女王陛下のお婿さま
 ファビオはおもむろに立ち上がると、ツカツカとクラウスに近づいた。そして彼の胸ぐらを掴み、ぐいと無理矢理立ち上がらせる。

「ファビオ王子……?」

 怒っているように自分を見つめるファビオに声を掛けた瞬間――鋭い拳がクラウスの胸を打ち抜いた。その衝撃でクラウスの身体はソファに倒れ込んだ。

 胸を殴られた衝撃でクラウスは苦しそうに咳込む。それを上から見下ろしながら、ファビオはまた問いかけた。

「お前はいつまで自分のそこに、嘘をつき続けるんだ?」

 ファビオが殴ったのは、胸……クラウスは痛むその場所に手を当てた。

 皮と筋肉、骨、心臓……そしてその奥深くには、クラウスがずっとひた隠しにしている――


 心……


 ファビオは、クラウスの心を撃ち抜いたのだ。

「俺は……もう、ティナを守ってやる事は出来ない……だから……」

 痛む胸から吐き出した言葉。それは、ファビオに引き出された本心だった。

「お前はもう少し、頭のいい奴だと思っていたんだがな」

「え……?」

「お前がそうして腐ってる間に、俺はアルベルティーナと結婚する。婚姻の式にぐらいは呼んでやるから、それまでせいぜい腐り果てとけ」

 怒っているような早口でファビオは捲し立てると、そのまま従者を連れて部屋を出て行ってしまった。





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