女王陛下のお婿さま
 ……どうしてか。結婚が決まってからファビオは、名前は出さないがクラウスを思い起こさせる事ばかり言ってくる。それが何故なのか、アルベルティーナには分からなかった。

(もう彼の事は諦めよう、そう思っているのに……)

 しばらくして、話はあらかた済んだのに、ファビオは退席せずにアルベルティーナをじっと見つめていた。それは何もかも見透かされそうな、力強い金色の瞳。

 あまりにもじっと見つめるので、少し居心地が悪くなってしまい、アルベルティーナは彼に問いかけた。

「あの……何か……?」

「いや……これから妻になるお前に、嘘をつき続けたくないから言っておく」

「はい?」

 ファビオは何を告白するのだろう。アルベルティーナには見当もつかなかった。しかし真剣な眼差しに、背筋を伸ばす。

「いつか、お前が鏡の泉に落ちたのを助けたのは、クラウスだ。実は俺は砂漠育ちで泳げない」

「え……?」

「それと、この間の舞踏会での騒動に、俺は自国ナバルレテへ行くように指示したんだ。だがクラウスはそれに従わず、ヘーメルのヨハン王子を連れてきた。結果的にそれが良かったんだが……だからあの夜もお前を助けたのは、本当はクラウスだ」

 アルベルティーナは混乱した。だって……

 鏡の泉に落ちた時、自分を助けたのはファビオ王子だと、クラウスがはっきりと言っていた。それに、舞踏会の騒動でヨハン王子を連れて来るよう指示し、自分を助けたのも彼だと思っていた。

 でも……

 本当は、クラウスだったの……?
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