女王陛下のお婿さま
 しかし、皆が驚くのも無理はない。普段エメリナは城内を歩く時も外出の時も、いつも夫であるクリストフと一緒なのだから。一人でいるのを見るのは、クリストフが一人で湯殿へ行ってしまい、それを私室で待っている時ぐらいだ。

 アルベルティーナはエメリナを傍にあった長椅子へ座らせ、自分もその隣に座った。仮縫い中だったがもう終わる所だったので、ドレスの針は全て外され仮糸で縫ってある。少しぐらい動いたり座ったりしても差し支えは無かった。

 突然のエメリナの来訪だったが、三着目でそろそろ休憩をしようと思っていた所だ。お針子の二人は部屋の外へ休憩に出され、マイラはお茶を入れてくると、やはり部屋を出て行った。

 衣裳部屋の中には、アルベルティーナとエメリナの二人だけになった。

「そのドレス、素敵ね。貴方の奇麗な黒髪がよく映えるわ」

 今アルベルティーナが着ているのは、純白のドレスだった。一着目は青いドレス、二着目は金の刺繍のドレスだったのだが。

 エメリナは優しい眼差しで娘の着ているドレスを眺め、嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう、お母様」

 アルベルティーナの美しい艶のある黒髪と黒い瞳は、母親譲りだ。エメリナも長く奇麗な黒髪を結い上げ、年を経てもキラキラと輝く黒い瞳をしている。

「でも本当に、急にどうしたのお母様?」

「ええ……少し貴方と話したいと思ってきたのよ、ティナ」

 控えめで、いつもクリストフの隣にニコニコして座っているエメリナ。アルベルティーナやクリストフの話には口を挟まず、滅多に自分の意見を言うような事もないのに。

 とわざわざこんな衣裳部屋へ来るなんて……

 アルベルティーナは不思議だった。

「ねえ、ティナ……」

「なあに? お母様」

「ファビオ王子と、本当に結婚するの?」

 アルベルティーナにそうはっきりと問いかけたのは、当のファビオ以外ではエメリナが初めてだった。
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