女王陛下のお婿さま
「な、何を言っているの、お母様……お父様だって、あんなに喜んでいるじゃない。それにもう、準備も進めているし……」
思ってもみない問いかけに、動揺するアルベルティーナ。エメリナはそんな彼女に、悲しそうに微笑みを向ける。
「まわりの人がどう思っているかじゃないわ。ティナ、貴方はどう思っているの?」
ファビオもエメリナも、同じ事を問いかける。
自分は、どうしたいのか……
この国の女王として正しくいたい、とアルベルティーナは思っている。国民の事を考え、誰もが幸せになれるように、と。
ファビオとの結婚も間違いなんかではない。父のクリストフだって喜んでいるし、九番目の王子だが彼と結婚する事で軍事大国ナバルレテと繋がりが出来る。国としても有益だ。
ファビオ自身も頼りになるし、あの大らかな性格はきっと国民にも慕われるだろう。
でも……
ポロポロと、いつの間にかアルベルティーナの瞳から涙が零れ出ていた。
それはまるで、言葉に出来ない気持ちが溢れ出したかのようだった。
「ああ、ティナ……ごめんなさい、貴方を泣かせるつもりじゃなかったの」
エメリナは突然泣き出した娘を、愛おしそうに抱きしめた。アルベルティーナはそんなエメリナに体を預け、泣き続けた。
(私は、間違ってなんかいない。それなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。どうして、涙が出るんだろう……)
「こんなに苦しむまで、気付いてあげられなくてごめんなさい、ティナ……」
エメリナは胸に顔を埋める娘の頭をゆっくりとあやすように撫でる。その優しい手の流れは、アルベルティーナの心をも撫でているようだった。