ハイエナ令嬢:幼なじみの年下魔王
5:ハイエナ(♀)に指輪を
1
ポンと蹴り飛ばされ、アレクセイは地面に転がされてしまう。
そこへヤギョは容赦なく、「オラァ!」と叫んで踏みつけた。二回も。それでも声が大きい割には手加減した踏み方で、頭が砕けたり内臓破裂はしなかった。
起き上がったアレクセイは、今度は頭突きで不意打ちを狙うのだが、ヤギョは自分も先手の頭突きで受け止めた。目から火花のアレクセイは血の出た額を押さえて転げ回るが、ヤギョは弟の両足をつかんで持ち上げ、振り回してポーンと干し草の山の方に放り投げた。
「山羊を相手に、人間が頭突き勝負で勝てると思ったか? 角のある頭同士で頭突きで決闘する動物なんだぞ」
「ヤギョは動物の山羊じゃないだろ」
「でも、お前すごく痛がってるじゃん?」
「こんにゃろ・・・・・・」
怒気もあらわなアレクセイが殴りかかるが、ヤギョはフットワークと身のこなしだけで(身構えもせずに)、ヒョイヒョイと避けてしまう。五六回くらい空ぶかしし、いきなり肘で切り返した裏拳で顔面の鼻先を打たれて鼻血が出る。たじろいだところをローキックで足の膝裏を払われて、あっさりとひっくり返ってしまう。
「お前、この十分で十回くらい死んでる。それとも二十回か? 実戦だったら脳ミソや内臓飛び散って動かなくなってる」
「ううう」
悔しそうなアレクセイに、横から馬エルフのメイドのエンプーサが「キュアキュア~」と治癒回復の魔法をかけた。様子で対戦終了を察したらしかった。
「まだだ。回復させるのは早い」
ヤギョはいきなり、瞬間移動のような動きでアレクセイに接近し、手刀で肋骨を叩き折った。吐血する弟の髪の毛をつかんで吊し上げ、片方の腕を筋肉と骨ごと握り潰す。腹に突き刺さるようなボディブローを叩き込んで、ようやく手を離して地面に転がす。
さらに顔面を蹴り飛ばして、折れた歯を飛び散らせた。たぶん全力でなく、手加減はしているのだろうが(もしも本気だったら弟の首が折れたり頭が砕けて千切れ飛んだはずだから)。
「安心して油断してるからだ。実戦だったら、頭の中で命乞いの言葉が駆け巡っているところだろうが、そうなっていないのは、お前が「まさか殺されはしないだろう」と高をくくっているからだ」
ヤギョは人さし指を振って、ニヤリと笑う。
当のアレクセイはそれどころでなく、苦痛で喋ることすらできない。そこへ、さらに無慈悲な追撃の鉄拳が降り注ぐ。
今度ばかりはアレクセイも転がって避け(吐血して悲惨に呻きながら)、ヤギョの頭を最後の力で蹴りつけようとする。しかし受け止められ、そのまま握り潰されてしまう。骨と肉が砕けて潰れる音と、アレクの悲鳴。
「うぎゃあああああ!」
「よし、ここまで」
ヤギョが許可すると、エンプーサが「キュアキュアキュア!」と回復させるが、数秒間はかかる。
「いつか、殺してやる」
「やってみろ」
立ち去り際にヤギョは凄みのある笑みを浮かべていて、自分たちには安全とわかっていてもキランは背筋が凍るようだった。魔族の血を引く中級魔王の一人に数えられるというだけのことはあって、さっきの兄弟の訓練試合も、どうにか動きを目で追うのがやっとだった。「実戦だったら十回死んでいる」というのも嘘ではないだろうし、キランでも同じことだろう。
ポンと蹴り飛ばされ、アレクセイは地面に転がされてしまう。
そこへヤギョは容赦なく、「オラァ!」と叫んで踏みつけた。二回も。それでも声が大きい割には手加減した踏み方で、頭が砕けたり内臓破裂はしなかった。
起き上がったアレクセイは、今度は頭突きで不意打ちを狙うのだが、ヤギョは自分も先手の頭突きで受け止めた。目から火花のアレクセイは血の出た額を押さえて転げ回るが、ヤギョは弟の両足をつかんで持ち上げ、振り回してポーンと干し草の山の方に放り投げた。
「山羊を相手に、人間が頭突き勝負で勝てると思ったか? 角のある頭同士で頭突きで決闘する動物なんだぞ」
「ヤギョは動物の山羊じゃないだろ」
「でも、お前すごく痛がってるじゃん?」
「こんにゃろ・・・・・・」
怒気もあらわなアレクセイが殴りかかるが、ヤギョはフットワークと身のこなしだけで(身構えもせずに)、ヒョイヒョイと避けてしまう。五六回くらい空ぶかしし、いきなり肘で切り返した裏拳で顔面の鼻先を打たれて鼻血が出る。たじろいだところをローキックで足の膝裏を払われて、あっさりとひっくり返ってしまう。
「お前、この十分で十回くらい死んでる。それとも二十回か? 実戦だったら脳ミソや内臓飛び散って動かなくなってる」
「ううう」
悔しそうなアレクセイに、横から馬エルフのメイドのエンプーサが「キュアキュア~」と治癒回復の魔法をかけた。様子で対戦終了を察したらしかった。
「まだだ。回復させるのは早い」
ヤギョはいきなり、瞬間移動のような動きでアレクセイに接近し、手刀で肋骨を叩き折った。吐血する弟の髪の毛をつかんで吊し上げ、片方の腕を筋肉と骨ごと握り潰す。腹に突き刺さるようなボディブローを叩き込んで、ようやく手を離して地面に転がす。
さらに顔面を蹴り飛ばして、折れた歯を飛び散らせた。たぶん全力でなく、手加減はしているのだろうが(もしも本気だったら弟の首が折れたり頭が砕けて千切れ飛んだはずだから)。
「安心して油断してるからだ。実戦だったら、頭の中で命乞いの言葉が駆け巡っているところだろうが、そうなっていないのは、お前が「まさか殺されはしないだろう」と高をくくっているからだ」
ヤギョは人さし指を振って、ニヤリと笑う。
当のアレクセイはそれどころでなく、苦痛で喋ることすらできない。そこへ、さらに無慈悲な追撃の鉄拳が降り注ぐ。
今度ばかりはアレクセイも転がって避け(吐血して悲惨に呻きながら)、ヤギョの頭を最後の力で蹴りつけようとする。しかし受け止められ、そのまま握り潰されてしまう。骨と肉が砕けて潰れる音と、アレクの悲鳴。
「うぎゃあああああ!」
「よし、ここまで」
ヤギョが許可すると、エンプーサが「キュアキュアキュア!」と回復させるが、数秒間はかかる。
「いつか、殺してやる」
「やってみろ」
立ち去り際にヤギョは凄みのある笑みを浮かべていて、自分たちには安全とわかっていてもキランは背筋が凍るようだった。魔族の血を引く中級魔王の一人に数えられるというだけのことはあって、さっきの兄弟の訓練試合も、どうにか動きを目で追うのがやっとだった。「実戦だったら十回死んでいる」というのも嘘ではないだろうし、キランでも同じことだろう。