ハイエナ令嬢:幼なじみの年下魔王
2
 キランはずっと固唾を飲んで見守っていた。
 ずいぶん前のいつだったか、ヤギョが話していたことがあった。アレクセイは「特別に定期的に半殺しにしてやる」のだと(なお、ヤギョと戦った相手はだいたいが死んでいる)。理由は、魔族の特性として、死闘と重ねたり重傷から立ち直ることで、覚醒したり戦闘能力の成長が促進される(傾向や俗説がある)からだ。
 たしかにアレクセイにとって「安全に殺されるも心配もなく、全力で死闘して、半殺しにされてちゃんと回復させて貰える」ような相手は、たしかに異母兄のヤギョくらいしかいない。少なくとも実戦経験に次ぐくらいの実習の経験にはなる。「弱いままにしておいて、いきなり強い奴と戦ったり襲われたらどうするんだ?」というのがヤギョの言い分だった(だからヤギョは、妹のルチアが仲の悪い異母姉サビーナに殺されかかっても、わざとギリギリまで助けずに見ていたりするらしい)。
 どうやらヤギョ自身が父侯爵からされた「入魂の教育」を異母弟にやっているようだったが(今以上にキレッキレだったレオ・クルスニコ侯爵殿!)、される側からすれば虐待と紙一重だろう。ヤギョは「「しょせん母親が惰弱な人間だから」なんて言って、それは同じ息子なのに期待値を下げたら「差別」だよ」と悲憤していたが(あれは「憐れみと愛」の情熱の眼差しだった!)、彼には天然ボケのような、ズレたところがあるのも、あの狂った魔王の父親の性格が遺伝したとしか思われない。

「あいつ、絶対に面白がって玩具にしてるだろ?」

 アレクセイは半べそで、暗い情熱で呟いた。

「あの山羊、角をへし折ってやる。クフフフフ」
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