ハイエナ令嬢:幼なじみの年下魔王
3
「よし、アレクセイ。今日からお前に特別にアルバイト(苦役・労働)させてやる。ついでに試練を命ずる」

 兄弟でティータイム(本日の対戦の反省と講評・助言)の途中で、ヤギョの言うことに、アレクセイはそっぽを向いて口を尖らせた。

「なんでそんなことを」

 するとヤギョは、小箱を取り出して、テーブルの上で蓋を開ける。
 それは指輪だった。
 森の琥珀に、アクセントの小さなダイヤモンドと大粒のトルコ石が一粒ずつ。金でできているようだった。

「これが報酬だ。労働については、別途に日当もつけてやろう」

「男に指輪? はっ、女の子ならまだしも。男に光りもののアクセサリーで釣れると?」

「この琥珀は特別製で、霊木の樹液からできたものだ。この金色の筋目と七色のプリズムを見ろ。癒やしの魔法効果もあるアイテム」

「マジックアイテム(魔法の道具)? でも、それだったら武器とかの方が」

「お前のじゃねえよ。キランちゃんの」

 ヤギョは「この愚弟めが」と顔に出ている。
 そこでようやくアレクセイも意図を悟った。

「そっか、婚約指輪か!」

「そっかじゃねーよ、人間なのに「うましか」(馬鹿)だな。いや、それ以上のアルパカ者だな」

「なんだよ、アルパカ者って」

「ものを知らん奴だ。アルパカというのは、馬やヒツジやラクダに似た系統の生き物で、大昔に高山地帯で飼育されていた。今は残っているのかどうか知らんが。毛の保温性が高くって・・・・・・」

 ヤレヤレと人を見下したからかう笑みを浮かべるヤギョに、アレクセイは問答を逆にツッコんだ。この兄のふざけたときの顔は、反芻中の山羊やヒツジを連想させるのは何故なのか?

「いや、アルパカじゃなくってアルパカ者って」

「馬と鹿の「馬鹿」より酷いってこと」

「そんな言葉、あったっけ?」

「オレが考えたナイスな言い回し」

「だったらわかるわけない。知るかよ」

 数秒間、会話が途切れた二人は沈黙した。
 やがてヤギョが再び切り出した。

「何の話してたんだっけ?」

「今のさっきに自分で言い出して、忘れる?」

 弟の呆れた顔に、ヤギョは全くの真顔で「うん」と自信満々に平然として答えた。だが同時に、アレクセイはイタズラで出し抜いてやれなどと不遜なことを思いつく。

「キランにあげる指輪を、ヤギョが用意してくれたって」

「そうだった、そうだった。野獣の毛皮と交換だから、お前に狩猟する権利のチャンスをやる」

 余計なことまでちゃんと思い出しやがるが、わざととぼけていただけなのか。アレクセイは内心に「チッ」と舌打ちはしつつも、そんな阿漕で旨い話が通るわけないとも思った。

「それと防壁作るから石運びと石積むのを苦役労働させてやる。城壁や石積みの技術は役に立つぞー」

 この兄、防壁・砦や陣地の設計者としても知られているのだそうだ。しばらく前には一緒に用水路を作るアルバイトもやらされたけどな!(ドワーフの技術魔術師に昇格されてコネができた)
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