ハイエナ令嬢:幼なじみの年下魔王
4
翌日、荒野に連れて行かれて、「青いライオン」と戦わせられた。どうも古代品種に魔術的な改良をされた(何か影響を受けて自然発生した?)モンスターであるらしい。魔法を跳ね返したり半減させる性質があるため、身体能力と物理攻撃メインで戦うしかない。
「ちゃんと魔法力で身体能力を強化しろ。やり方は覚えて練習してるよな? それでも噛まれたら骨ごと噛み砕かれるぞ、気をつけろよ」
ヤギョは腰蓑一丁でビーズのネックレスに羽根飾りで、原始的な儀式用の太鼓を叩いている(ノリノリだった!)。その横で同じような原始人ファッションのエルフとドワーフ数名が、笛を吹いたり手拍子と歌。
「これっていったい?」
「遠い昔、人類起源のアフリカン大陸というのがあって、黒檀のごとき肌の魔犀(まさい)族という勇敢で獰猛な戦士の部族がいた。彼らは勇士になるためにわざと稚拙な原始的な武器でライオンと戦ったわけだが、それにあやかった闘争の儀式だ」
「青ライオンは数と繁殖が限られていて、でも増えすぎると危険だから、適当に希望者が戦って数を調整している。でも長老会の許可を得ずに勝手に殺すのは一応は禁止」
ヤギョとドワーフの老人が説明してくれる。
(ナンダヨ、ソレ?)
アレクセイは目が点になる。
「縄張りに入ると、すごく攻撃的になる。でも生息範囲があって、増えてくると同じ青ライオン同士でも縄張り争いと序列闘争で殺し合いはじめるから。だから定期的に一定数までだったら、人間が狩っても同じことなんだよ」
「君の兄貴のこのヤギョと君のパパもやったよ。パパは勝手にやって、調子に乗って面白がって一時に三匹も殺して、ヤギョとみんなでやりすぎを抗議したけどねえ。毛皮は二枚は長老会に没収・返還してもらった」
腹を括った少年を、笛・太鼓と歌と手拍子が応援している。ガルルと唸りながら迫ってくる青ライオンは圧巻であった。アレクセイは剣を握りしめて迎え撃つ。
斬りつけても、毛皮で跳ね返ってしまう。飛びかかってくるのを避けながら、何回も斬りつけたけれども、殴っているのと変わらない。
(モンスターだ・・・・・・)
きっと並の弱い(あんまり強くない下級の)魔族だったら、たとえ武器があっても鋭い爪で引き裂かれ、あっさりと噛み殺されて一巻の終わり。この顎は「死」である。
しかも、アレクセイは初心者で年も若いので武器に剣を使っているが、上級者はナイフや素手でやるらしい。
「うわっあ!」
怒気を増した青ライオンの突進を転がるように避けて、どうにか前脚を一本だけ切り飛ばす。だがライオンは血塗られた雄叫びで、さらに殺意を倍増させてくる。半透明なオーラで欠けた前脚を補って迫ってくる。
飛びかかってくるのを、今度は突き刺した切っ先が腹に刺さって、切り裂けた。尻もちから慌てて立ち上がる。それでも臓物をぶちまけ引きずりながら怒号上げ、闘争本能全開のライオンさん。
アレクセイは両手持ちで、剣を縦に渾身の一振りする。鼻先にくさびのように刺さり、刃は頭を真っ二つに割る。それでもすぐには死なず、しばらく押し合いで気が気でない。
「はあ! ハア、ハア!」
辛くも勝利した少年は肩で息をしていた。
死ぬかと思ったしガチの死闘だった。
ついでにエルフたちの「勇士」の称号がオマケで付いたわけだが。
5
その日の夕食のあとで。
ようやく手に入れた指輪を、キランの手を出させてはめてやった。驚き、喜色を浮かべつつも、キランは釈然としないようだった。
この琥珀の指輪の値打ちからすれば(高価な宝石なだけでなく魔法アイテム)、いかに貴公子とはいえ、アレクセイのような少年が持っていることが変なのだった。こんな短期間にクルスニコ侯爵の城から祝いの引き出物が贈られるとは考えにくいし、その様子もない。ありうるのは近くの森にいる兄のヤギョか(一緒にどこか出かけたらしいとは聞いていたから)、それともアレクセイが誰か(敵対する魔族?)から強奪したかのいずれかだろう(ヤギョの性格からすれば、弟とカチコミするのもありうるが、事件の噂はまだ聞かない)。だからキランの面差しには少し不安がよぎる。
「これ、どうしたの?」
「ライオンと戦わせられた。青いやつ」
アレクセイが事情を話すと(姉と妹は興味津々に面白がっていた)、キランは大笑いして、思いっきりキスした。姉と妹の見ている前で抱きついて、舌までからめて。
「素敵な男の子!」
翌日、荒野に連れて行かれて、「青いライオン」と戦わせられた。どうも古代品種に魔術的な改良をされた(何か影響を受けて自然発生した?)モンスターであるらしい。魔法を跳ね返したり半減させる性質があるため、身体能力と物理攻撃メインで戦うしかない。
「ちゃんと魔法力で身体能力を強化しろ。やり方は覚えて練習してるよな? それでも噛まれたら骨ごと噛み砕かれるぞ、気をつけろよ」
ヤギョは腰蓑一丁でビーズのネックレスに羽根飾りで、原始的な儀式用の太鼓を叩いている(ノリノリだった!)。その横で同じような原始人ファッションのエルフとドワーフ数名が、笛を吹いたり手拍子と歌。
「これっていったい?」
「遠い昔、人類起源のアフリカン大陸というのがあって、黒檀のごとき肌の魔犀(まさい)族という勇敢で獰猛な戦士の部族がいた。彼らは勇士になるためにわざと稚拙な原始的な武器でライオンと戦ったわけだが、それにあやかった闘争の儀式だ」
「青ライオンは数と繁殖が限られていて、でも増えすぎると危険だから、適当に希望者が戦って数を調整している。でも長老会の許可を得ずに勝手に殺すのは一応は禁止」
ヤギョとドワーフの老人が説明してくれる。
(ナンダヨ、ソレ?)
アレクセイは目が点になる。
「縄張りに入ると、すごく攻撃的になる。でも生息範囲があって、増えてくると同じ青ライオン同士でも縄張り争いと序列闘争で殺し合いはじめるから。だから定期的に一定数までだったら、人間が狩っても同じことなんだよ」
「君の兄貴のこのヤギョと君のパパもやったよ。パパは勝手にやって、調子に乗って面白がって一時に三匹も殺して、ヤギョとみんなでやりすぎを抗議したけどねえ。毛皮は二枚は長老会に没収・返還してもらった」
腹を括った少年を、笛・太鼓と歌と手拍子が応援している。ガルルと唸りながら迫ってくる青ライオンは圧巻であった。アレクセイは剣を握りしめて迎え撃つ。
斬りつけても、毛皮で跳ね返ってしまう。飛びかかってくるのを避けながら、何回も斬りつけたけれども、殴っているのと変わらない。
(モンスターだ・・・・・・)
きっと並の弱い(あんまり強くない下級の)魔族だったら、たとえ武器があっても鋭い爪で引き裂かれ、あっさりと噛み殺されて一巻の終わり。この顎は「死」である。
しかも、アレクセイは初心者で年も若いので武器に剣を使っているが、上級者はナイフや素手でやるらしい。
「うわっあ!」
怒気を増した青ライオンの突進を転がるように避けて、どうにか前脚を一本だけ切り飛ばす。だがライオンは血塗られた雄叫びで、さらに殺意を倍増させてくる。半透明なオーラで欠けた前脚を補って迫ってくる。
飛びかかってくるのを、今度は突き刺した切っ先が腹に刺さって、切り裂けた。尻もちから慌てて立ち上がる。それでも臓物をぶちまけ引きずりながら怒号上げ、闘争本能全開のライオンさん。
アレクセイは両手持ちで、剣を縦に渾身の一振りする。鼻先にくさびのように刺さり、刃は頭を真っ二つに割る。それでもすぐには死なず、しばらく押し合いで気が気でない。
「はあ! ハア、ハア!」
辛くも勝利した少年は肩で息をしていた。
死ぬかと思ったしガチの死闘だった。
ついでにエルフたちの「勇士」の称号がオマケで付いたわけだが。
5
その日の夕食のあとで。
ようやく手に入れた指輪を、キランの手を出させてはめてやった。驚き、喜色を浮かべつつも、キランは釈然としないようだった。
この琥珀の指輪の値打ちからすれば(高価な宝石なだけでなく魔法アイテム)、いかに貴公子とはいえ、アレクセイのような少年が持っていることが変なのだった。こんな短期間にクルスニコ侯爵の城から祝いの引き出物が贈られるとは考えにくいし、その様子もない。ありうるのは近くの森にいる兄のヤギョか(一緒にどこか出かけたらしいとは聞いていたから)、それともアレクセイが誰か(敵対する魔族?)から強奪したかのいずれかだろう(ヤギョの性格からすれば、弟とカチコミするのもありうるが、事件の噂はまだ聞かない)。だからキランの面差しには少し不安がよぎる。
「これ、どうしたの?」
「ライオンと戦わせられた。青いやつ」
アレクセイが事情を話すと(姉と妹は興味津々に面白がっていた)、キランは大笑いして、思いっきりキスした。姉と妹の見ている前で抱きついて、舌までからめて。
「素敵な男の子!」