やさしく、恋が戻ってくる
今日も、浩司の唇が、今日子のそれに何度も重ねられる。
ひとつ、またひとつと、確かめるように、名残惜しそうに。
まるで愛しさが溢れすぎて、ひとつのキスでは足りないかのように。
やがて、ようやく唇が離れた。
けれども、その距離はほんのわずか。吐息が触れるほど近くで、浩司は今日子の瞳をのぞき込んだ。
「……まだ、足りないくらいだ」
低く掠れた声で囁くその音さえ、今日子の胸を震わせた。
唇が離れても、心はまだ深く繋がったまま。
今日子はただ、そっとまぶたを閉じた。熱を帯びた頬に、彼の呼吸が優しく触れていた。
「……今日子」
「ん?」
「……何でもない」
名前を呼んでおきながら言葉を濁すと、今日子はくすっと笑った。
「ねえ、なんで途中でやめるの?気になるんだけど」
「……そのうち言うよ。もう少し先になったら」
そう、今はまだ言えない。
今日子が十八になる、あの春まで。
その日、ちゃんと指輪を渡して、迎えに行くって決めている。
だから今、必死に働いてる。
安くて狭い部屋じゃなく、ふたりで暮らしても窮屈にならない広さの場所を借りるために。
彼女が好きな家具を、好きに選べるように。
そして、ちゃんとした指輪を渡して、「彼女」じゃなく「婚約者」にしたい。
今日子の知らないところで、すべては少しずつ、準備が進んでいる。
「……こうちゃん?」
「……今日子が笑ってくれるだけで、俺、頑張れるんだよ」
そう言って、もう一度そっと額にキスを落とした。
この幸せを、ちゃんと守れる男になるために。
彼女の知らない決意が、静かに胸で燃えていた。
今日子は、浩司の腕の中でほんの少し体を動かし、上目づかいで彼を見上げた。
「ねえ……こうちゃんと、ずっと一緒にいられたらいいのに」
その一言は、あまりにも自然で、子どものような無邪気さに満ちていた。
けれど、浩司の胸に落ちた瞬間、それは静かに、けれど確かに火を灯した。
“ずっと一緒にいたい”
その言葉を、俺は約束に変える。
口には出せないけれど、あの日決めた未来のために。
十八歳になったその日、指輪を渡して、ちゃんとプロポーズするんだ。
「……ああ。そうなるよ、絶対」
「え?」
「ずっと一緒にいられる。俺が、そうする」
唐突に力強く言い切った浩司に、今日子はきょとんとした顔をしてから、ふわりと笑った。
「なにそれ、頼もしいなあ。……じゃあ、信じてるね?」
「うん。信じてろ」
今日子はうれしそうに笑って、浩司の胸にぴったりともたれかかった。
指輪のデザインは、もう決めてある。プロポーズの言葉も、何度も頭の中で練習してる。
あとは、最高のタイミングで渡すだけ。
腕の中の今日子のぬくもりを感じながら、浩司は静かに目を閉じた。
彼女がまだ知らない未来は、確かに今、少しずつ形になろうとしている。
ひとつ、またひとつと、確かめるように、名残惜しそうに。
まるで愛しさが溢れすぎて、ひとつのキスでは足りないかのように。
やがて、ようやく唇が離れた。
けれども、その距離はほんのわずか。吐息が触れるほど近くで、浩司は今日子の瞳をのぞき込んだ。
「……まだ、足りないくらいだ」
低く掠れた声で囁くその音さえ、今日子の胸を震わせた。
唇が離れても、心はまだ深く繋がったまま。
今日子はただ、そっとまぶたを閉じた。熱を帯びた頬に、彼の呼吸が優しく触れていた。
「……今日子」
「ん?」
「……何でもない」
名前を呼んでおきながら言葉を濁すと、今日子はくすっと笑った。
「ねえ、なんで途中でやめるの?気になるんだけど」
「……そのうち言うよ。もう少し先になったら」
そう、今はまだ言えない。
今日子が十八になる、あの春まで。
その日、ちゃんと指輪を渡して、迎えに行くって決めている。
だから今、必死に働いてる。
安くて狭い部屋じゃなく、ふたりで暮らしても窮屈にならない広さの場所を借りるために。
彼女が好きな家具を、好きに選べるように。
そして、ちゃんとした指輪を渡して、「彼女」じゃなく「婚約者」にしたい。
今日子の知らないところで、すべては少しずつ、準備が進んでいる。
「……こうちゃん?」
「……今日子が笑ってくれるだけで、俺、頑張れるんだよ」
そう言って、もう一度そっと額にキスを落とした。
この幸せを、ちゃんと守れる男になるために。
彼女の知らない決意が、静かに胸で燃えていた。
今日子は、浩司の腕の中でほんの少し体を動かし、上目づかいで彼を見上げた。
「ねえ……こうちゃんと、ずっと一緒にいられたらいいのに」
その一言は、あまりにも自然で、子どものような無邪気さに満ちていた。
けれど、浩司の胸に落ちた瞬間、それは静かに、けれど確かに火を灯した。
“ずっと一緒にいたい”
その言葉を、俺は約束に変える。
口には出せないけれど、あの日決めた未来のために。
十八歳になったその日、指輪を渡して、ちゃんとプロポーズするんだ。
「……ああ。そうなるよ、絶対」
「え?」
「ずっと一緒にいられる。俺が、そうする」
唐突に力強く言い切った浩司に、今日子はきょとんとした顔をしてから、ふわりと笑った。
「なにそれ、頼もしいなあ。……じゃあ、信じてるね?」
「うん。信じてろ」
今日子はうれしそうに笑って、浩司の胸にぴったりともたれかかった。
指輪のデザインは、もう決めてある。プロポーズの言葉も、何度も頭の中で練習してる。
あとは、最高のタイミングで渡すだけ。
腕の中の今日子のぬくもりを感じながら、浩司は静かに目を閉じた。
彼女がまだ知らない未来は、確かに今、少しずつ形になろうとしている。