やさしく、恋が戻ってくる
遊園地当日。
集合場所に着いた今日子は、見知らぬ大学生たちに囲まれて少し緊張していた。
でも、春香さんの明るさと、みんなのフランクな雰囲気に助けられて、徐々に笑顔も増えていく。
「今日子ちゃん、高校生なんだって?大人っぽいから全然わかんなかった」
そう言って声をかけてきたのは、グループのひとり藤木悠真(ゆうま)。
大学二年生で、メガネが似合うちょっと理系っぽい、でも物腰柔らかい男子だった。
(……ん?)なことないですよ」
「いやいや、自然体なのがいいんだって」
ちょっとした言葉の端々に、彼の優しさと興味がにじむ。
アトラクションに並ぶ間、自然と隣になる回数が増えていき、
「これ、手、貸すよ」なんてジェットコースターの安全バーに手を添えてくれる場面も。
(やさしい……でも、なんかくすぐったい)
今日子は戸惑いつつも、久しぶりに“異性から見られている”という感覚に少しだけドキドキしていた。
数日後の夕方。
バイト終わりのカフェの前で、今日子がバッグを肩にかけたとき。
「今日子ちゃん!」
聞き慣れた声に振り返ると、そこには藤木悠真の姿があった。
白シャツにリュック、相変わらず優しげな雰囲気。でもどこか、今日はいつもより表情が引き締まって見えた。
「どうしたの、ここ……?」
「春香さんに聞いた。バイトしてるって」
少し息を切らせながら、藤木は笑う。
「急にごめんね。ちょっと……話したいことがあって」
その言葉に、今日子の胸がすっと冷たくなったような、でもどこか温かくなったような。不思議な感覚が走る。
カフェの前の並木道。
夕暮れの光が差し込む中、ふたりはベンチに並んで座った。
「この前、一緒に遊園地行って……正直、すごく楽しかったんだ」
「うん、私も……久しぶりにあんなに笑ったかも」
「それで、ずっと気になってて……」
藤木はポケットの中で手をぎゅっと握ったまま、まっすぐに今日子を見た。
「俺、今日子ちゃんのこと……ちゃんと好きだなって思った」
静かな声。でも、迷いはなかった。
「すぐにどうこうしてほしいとかじゃない。
でも……また会いたいなって思ったし、これからもっと知りたいって思ってる」
今日子は何も言えずに、ただ藤木の目を見つめていた。
優しくて、真面目で、嘘のない人。
だからこそ、彼の言葉はまっすぐに胸に響いてしまう。
でも。
「ありがとう……そう言ってもらえて、すごく嬉しい」
今日子は、少しだけ微笑んで、視線を落とした。
「でも、私……今、好きな人がいるの。ちゃんと、まだ終わってないの」
その言葉に、藤木はゆっくりと頷いた。
「そっか。……それも、なんとなく分かってた」
少し寂しそうに笑ったその横顔が、大人びて見えた。
「でも、また会ってくれたら嬉しい。焦らないし、無理に迫ったりもしないから。
好きって、そういうもんだと思うし」
「……うん」
夕焼けの光の中、ふたりの影が、ほんの少し重なった。
今日子は、胸の奥で確かに“何か”が揺れたのを感じていた。
それが、寂しさのせいなのか、誰かの優しさに触れたからなのか。まだ、自分でもわからなかった。
集合場所に着いた今日子は、見知らぬ大学生たちに囲まれて少し緊張していた。
でも、春香さんの明るさと、みんなのフランクな雰囲気に助けられて、徐々に笑顔も増えていく。
「今日子ちゃん、高校生なんだって?大人っぽいから全然わかんなかった」
そう言って声をかけてきたのは、グループのひとり藤木悠真(ゆうま)。
大学二年生で、メガネが似合うちょっと理系っぽい、でも物腰柔らかい男子だった。
(……ん?)なことないですよ」
「いやいや、自然体なのがいいんだって」
ちょっとした言葉の端々に、彼の優しさと興味がにじむ。
アトラクションに並ぶ間、自然と隣になる回数が増えていき、
「これ、手、貸すよ」なんてジェットコースターの安全バーに手を添えてくれる場面も。
(やさしい……でも、なんかくすぐったい)
今日子は戸惑いつつも、久しぶりに“異性から見られている”という感覚に少しだけドキドキしていた。
数日後の夕方。
バイト終わりのカフェの前で、今日子がバッグを肩にかけたとき。
「今日子ちゃん!」
聞き慣れた声に振り返ると、そこには藤木悠真の姿があった。
白シャツにリュック、相変わらず優しげな雰囲気。でもどこか、今日はいつもより表情が引き締まって見えた。
「どうしたの、ここ……?」
「春香さんに聞いた。バイトしてるって」
少し息を切らせながら、藤木は笑う。
「急にごめんね。ちょっと……話したいことがあって」
その言葉に、今日子の胸がすっと冷たくなったような、でもどこか温かくなったような。不思議な感覚が走る。
カフェの前の並木道。
夕暮れの光が差し込む中、ふたりはベンチに並んで座った。
「この前、一緒に遊園地行って……正直、すごく楽しかったんだ」
「うん、私も……久しぶりにあんなに笑ったかも」
「それで、ずっと気になってて……」
藤木はポケットの中で手をぎゅっと握ったまま、まっすぐに今日子を見た。
「俺、今日子ちゃんのこと……ちゃんと好きだなって思った」
静かな声。でも、迷いはなかった。
「すぐにどうこうしてほしいとかじゃない。
でも……また会いたいなって思ったし、これからもっと知りたいって思ってる」
今日子は何も言えずに、ただ藤木の目を見つめていた。
優しくて、真面目で、嘘のない人。
だからこそ、彼の言葉はまっすぐに胸に響いてしまう。
でも。
「ありがとう……そう言ってもらえて、すごく嬉しい」
今日子は、少しだけ微笑んで、視線を落とした。
「でも、私……今、好きな人がいるの。ちゃんと、まだ終わってないの」
その言葉に、藤木はゆっくりと頷いた。
「そっか。……それも、なんとなく分かってた」
少し寂しそうに笑ったその横顔が、大人びて見えた。
「でも、また会ってくれたら嬉しい。焦らないし、無理に迫ったりもしないから。
好きって、そういうもんだと思うし」
「……うん」
夕焼けの光の中、ふたりの影が、ほんの少し重なった。
今日子は、胸の奥で確かに“何か”が揺れたのを感じていた。
それが、寂しさのせいなのか、誰かの優しさに触れたからなのか。まだ、自分でもわからなかった。