やさしく、恋が戻ってくる
キスのあと、ふたりは額をそっと寄せ合ったまま、しばらく言葉を交わせずにいた。
けれど、浩司がふと、低く問いかけた。
「……俺のこと、嫌じゃないのか?」
今日子は、はっとしたように目を見開いて、すぐに首を振った。
「ううん……ずっと、触ってほしかったの」
その声は、まるで少女のようにか細くて、甘えていて、でも確かな覚悟があった。
「……ずっと?」
「うん……でもね、もう女として見れないのかなあって、
そう思うと、すごく悲しくて……寂しくて……昨日は本当に、どうしようって思って……」
言葉の途中で、今日子の声が詰まった。あふれてきた涙が頬をつたって、胸元のレースにしずくを落とした。
浩司は、そっとその頬に手を添えた。
「今日子……ごめんな」
「……」
「子育てを全部ひとりでしてくれて、疲れてるのは、わかってた。
俺なりに、支えてきたつもりだった。でも。ずっと抱きたかったのに、何度も拒否されて……
気づいたら、俺……求めることができなくなってた」
今日子は涙をこぼしながら、首を横に振った。
「……私のせい……だよね……」
「違う」
浩司はすぐに言った。その目には、迷いも恨みもなかった。
「俺が勝手に諦めただけだ。今日子を傷つけるのが怖くて、何もしなかった。
……ごめんな。また不安にさせて、泣かせてしまって……」
そして、もう一度、そっと抱きしめながら囁く。
「でもな、今日子。俺は、いつだって愛してる。ずっと、抱きたいと思ってる。欲しいのは……お前だけだよ」
その言葉に、今日子の両腕が、ぎゅっと浩司の背中に回された。
「こうちゃん……」
その一言に、すべての想いが込められていた。
ふたりは、何も言わず、ただもう一度長くキスを交わした。昨日までの寂しさも、不安も、傷も、すべてが、いま重ねるこの体温で溶けていく気がした。
「こうちゃん……久しぶりだから、優しくしてね」
今日子がそっと囁いた。その声はかすかに震えていて、それでも確かな甘さと、恥じらいがにじんでいた。
浩司は、少しだけ間を置いて、低く答えた。
「……それは、できない約束かもしれない」
腕の中で、今日子の身体がわずかにぴくりと揺れる。
「今日子が、あまりに綺麗すぎて……これ以上、我慢できる自信がない」
その言葉に、今日子は小さく息を呑んだ。そして、ゆっくりと目を閉じた。
「……好きにして。ずっと、こうちゃんのものだから」
それは、再び女として“生き返る”決意だった。
浩司は今日子をそっと抱き上げ、寝室へ向かった。その歩みは、ゆっくりで、でも迷いのないものだった。
夜の静けさの中で、ふたりの想いはようやく一つになる。
長く触れられなかった時間を埋めるように、焦がれていた熱と、愛しさと、すべてが肌を通して伝わっていく。
そう囁いた今日子の声は、濡れたまなざしとともに甘く震えていた。
決して媚びた言い方ではない。深く、成熟した女だけが持つ、すべてを預ける覚悟と甘さがそこにあった。
その言葉に、浩司の理性はゆっくりと崩れていった。
「……今日子……」
もう何も抑える必要なんてなかった。腕の中にあるのは、ずっと愛してきた、ただひとりの女。
妻であり、母であり、そして.......今夜は、女そのもの。
キスは自然に深くなっていく。何度も触れて、確かめるように。唇が、鎖骨が、指先が、肌の上を丁寧に滑っていく。
「甘えていい?」
今日子の声は、まるで囁くようで、それでいて切なげな強さがあった。
「……思いきり甘えてこい。もう、絶対に離さないから」
シーツの上で交わされる、まなざしとまなざし。触れるたび、熱があがる。
重なるたび、時間が溶ける。
ふたりの肌と肌の間に、これまで埋められなかった寂しさがひとつずつ、溶けていく。
何度も名を呼び、何度も抱きしめ、そして何度も愛し合った。
今夜、ふたりはようやく、恋人のように、魂ごと重なり合った。
愛されたいと願う女と、愛してやまない男の、長い夜が始まっていた。
けれど、浩司がふと、低く問いかけた。
「……俺のこと、嫌じゃないのか?」
今日子は、はっとしたように目を見開いて、すぐに首を振った。
「ううん……ずっと、触ってほしかったの」
その声は、まるで少女のようにか細くて、甘えていて、でも確かな覚悟があった。
「……ずっと?」
「うん……でもね、もう女として見れないのかなあって、
そう思うと、すごく悲しくて……寂しくて……昨日は本当に、どうしようって思って……」
言葉の途中で、今日子の声が詰まった。あふれてきた涙が頬をつたって、胸元のレースにしずくを落とした。
浩司は、そっとその頬に手を添えた。
「今日子……ごめんな」
「……」
「子育てを全部ひとりでしてくれて、疲れてるのは、わかってた。
俺なりに、支えてきたつもりだった。でも。ずっと抱きたかったのに、何度も拒否されて……
気づいたら、俺……求めることができなくなってた」
今日子は涙をこぼしながら、首を横に振った。
「……私のせい……だよね……」
「違う」
浩司はすぐに言った。その目には、迷いも恨みもなかった。
「俺が勝手に諦めただけだ。今日子を傷つけるのが怖くて、何もしなかった。
……ごめんな。また不安にさせて、泣かせてしまって……」
そして、もう一度、そっと抱きしめながら囁く。
「でもな、今日子。俺は、いつだって愛してる。ずっと、抱きたいと思ってる。欲しいのは……お前だけだよ」
その言葉に、今日子の両腕が、ぎゅっと浩司の背中に回された。
「こうちゃん……」
その一言に、すべての想いが込められていた。
ふたりは、何も言わず、ただもう一度長くキスを交わした。昨日までの寂しさも、不安も、傷も、すべてが、いま重ねるこの体温で溶けていく気がした。
「こうちゃん……久しぶりだから、優しくしてね」
今日子がそっと囁いた。その声はかすかに震えていて、それでも確かな甘さと、恥じらいがにじんでいた。
浩司は、少しだけ間を置いて、低く答えた。
「……それは、できない約束かもしれない」
腕の中で、今日子の身体がわずかにぴくりと揺れる。
「今日子が、あまりに綺麗すぎて……これ以上、我慢できる自信がない」
その言葉に、今日子は小さく息を呑んだ。そして、ゆっくりと目を閉じた。
「……好きにして。ずっと、こうちゃんのものだから」
それは、再び女として“生き返る”決意だった。
浩司は今日子をそっと抱き上げ、寝室へ向かった。その歩みは、ゆっくりで、でも迷いのないものだった。
夜の静けさの中で、ふたりの想いはようやく一つになる。
長く触れられなかった時間を埋めるように、焦がれていた熱と、愛しさと、すべてが肌を通して伝わっていく。
そう囁いた今日子の声は、濡れたまなざしとともに甘く震えていた。
決して媚びた言い方ではない。深く、成熟した女だけが持つ、すべてを預ける覚悟と甘さがそこにあった。
その言葉に、浩司の理性はゆっくりと崩れていった。
「……今日子……」
もう何も抑える必要なんてなかった。腕の中にあるのは、ずっと愛してきた、ただひとりの女。
妻であり、母であり、そして.......今夜は、女そのもの。
キスは自然に深くなっていく。何度も触れて、確かめるように。唇が、鎖骨が、指先が、肌の上を丁寧に滑っていく。
「甘えていい?」
今日子の声は、まるで囁くようで、それでいて切なげな強さがあった。
「……思いきり甘えてこい。もう、絶対に離さないから」
シーツの上で交わされる、まなざしとまなざし。触れるたび、熱があがる。
重なるたび、時間が溶ける。
ふたりの肌と肌の間に、これまで埋められなかった寂しさがひとつずつ、溶けていく。
何度も名を呼び、何度も抱きしめ、そして何度も愛し合った。
今夜、ふたりはようやく、恋人のように、魂ごと重なり合った。
愛されたいと願う女と、愛してやまない男の、長い夜が始まっていた。