【 ファン限定 】代償は溺愛.煽情的啼鳥に悪戯

小夜啼鳥

Side:古海 七帆(うるみ ななほ)
風間 藤九郎(かざま とうくろう)


『俺は逃がしてやるつもりはない』
そう言われて。

鍵を閉めたはずの部屋。ベッドの上。
寝返りをうつと、目の前に男前の寝顔がすぐそこに。

布団を捲り。
就寝用の部屋着に乱れはない。
どうしてここに。
驚いたけれど。

端正な顔。
最近、藤九郎の顔をじっくり見た事がなかった気もする。

手を伸ばし、彼の頬に触れた瞬間。
両目がカッと見開き。

「今、何時?」

いつも私より先に起きているから、焦ったのだろうか。

「5時か6時?」

私のセットした目覚ましは鳴っていない。

「6時前か……七帆は二度寝するよね。俺はもう起きるけど。」

平然と対応しているけれど。
どうして私のベッドに居るのか。

「ん?あぁ……お嬢様、おはようございます。」

執事モード。
だけど。寝ぐせのついた髪。ゆるい就寝着で。

「ふふ。おはよう。どうして私の部屋に居るのかは、なんとなく察するのだけれど。今後の許可はしないわよ。執事なら。」

私が欲しいのは執事じゃない。
だって私は普通の家庭に生まれたのだから。

けれど、それは。

「では今後、許可のない侵入は致しません。」

作ったような笑みで、姿勢良く去っていく。
執事の家系で生まれたあなたにとって、それは存在意義。


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