響け、希望と愛の鐘
「姉ちゃん!」

 その時、ドアが勢いよく開いた。

 ショートカットの茶髪に、ベージュのキャップ。

 白いフリルブラウスにデニムのワイドパンツという格好で、自信たっぷりの笑顔で入ってくる。

 妹の優華(ゆうか)だ。

「姉ちゃんのデモ、めっちゃバズってるじゃん! #WomenReclaimSafety、世界トレンド入りしたよ!

 でも、ストーカー、ヤバいって噂だよ。
 家までつけ回してるって、マジ?」

優華の声は明るいが、心配が滲む。

 優美は目を細め、反論する。

「私は私のやり方で戦ってる。

 ストーカーなんて、警察に任せればいい」

「ふーん、さすが姉ちゃん!

 でも、本当に大丈夫?
私なら、まだ少し残ってる魔力を使えば、姉ちゃんの力になれるのに」

「優華ちゃん、優美先輩のデモ、カッコいいっすよ。

 スピーチ、めっちゃ響くし」

優華がニヤリと笑って、矢萩の腕を引っ張って何やら話している。

「ちょ、優華ちゃん!

 やめろって!
 それにしても、帰らなくて大丈夫?

 君のお母さんは弁護士、
 君のお父さんは検察官。

 いくら仕事が忙しいとはいえ、
 年頃の娘がいつまでも家に帰って来ないなんて、心配するんじゃないか?」

そんなやり取りを聞いていると、優美のスマホが震えた。また匿名メッセージ。

 「今夜、お前を連れていく」。

 文面に、どこか見覚えのある口調を感じ、優美の背筋が冷えた。

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