ポーカーフェイスの二人は相思相愛で甘々で

8

湯田中家のリビング。

木の温かみのある広い部屋に、家族と親しい面々が集まっていた。

湯田中瑠璃(蓮の姉)、中瀬祐、桜井楓(結婚して桜井姓)、桜井一朗、そして湯田中陸(蓮の弟)。

みんなでお茶を飲みながら、賑やかに談笑していたが――
蓮と雪乃が二人並んで正座しているその様子に、誰もが「何かある」と察していた。

瑠璃が優しく微笑む。

「ねえ、蓮。そんなに改まって座って、どうしたの?」

蓮が深呼吸を一つして、隣の雪乃と目を合わせた。
雪乃は無表情のまま、でも少しだけ頬が赤い。

「……あの。」

みんなが一斉に蓮に視線を注ぐ。

蓮はきゅっと拳を握った。

「おれたち、入籍することにしました。ひとまず、籍を入れて、国家資格とったら、一緒にくらします」

一瞬、部屋の空気が止まったようになった。

次の瞬間――

「えええええええええええーーーーっ!?」

叫んだのは陸。
立ち上がりかけた勢いで、テーブルの茶菓子を一つ落とす。

「ちょ、兄ちゃん!学生結婚!? ほんとに!?」

蓮は陸を見て、静かにうなずく。

「ほんと。雪乃と結婚する。」

瑠璃が口元に手を当てたまま、目を丸くしている。

「……びっくりした……!でも……蓮らしいわね。」

中瀬祐が「へえー」と感心したように首を傾げる。

「いやー、蓮が結婚かぁ……。でも、なんか納得。雪乃さんなら完璧だし。」

雪乃は相変わらず無表情のまま、小さな声でぼそり。

「……完璧じゃないです。」

楓が頬を少し赤くしながら、にっこり笑う。

「ふふ。蓮らしいよね。淡々としてるのに、決めるとこは決めるっていうか。」

隣の一朗も腕を組みながら、にやりと笑う。

「しかも相手が雪乃ちゃんってとこが、また蓮らしいな。」

「そうかな……」と蓮がぼそりとつぶやくと、一朗が肩を叩いた。

「蓮、お前、昔から淡々としてるくせに、好きになったら一直線だもんな。」

陸が「蓮が結婚かぁ……!」と感慨深げに天井を見上げる。

「じゃあ、赤ちゃんもすぐできちゃったりして……?」

蓮が一瞬固まる。
雪乃も耳まで赤くして俯く。

「……まだ、赤ちゃんは作らない。」と蓮。

「そのうち作るけど。」と雪乃。

「作るんかい!」と陸が叫ぶ。

瑠璃はふわりと笑みを浮かべ、雪乃の手をそっと取った。

「雪乃ちゃん、うちの蓮をよろしくね。……でも無理しないでね。二人とも、まだ学生なんだから。」

雪乃がこくんとうなずく。

「……わたし、蓮のこと支えたいんです。お互いに、ちゃんとお医者さんになるために。」


楓がニコニコしながら雪乃に耳打ちする。

「蓮は静かだけど、一途だし溺愛してくれるから安心していいよ。」

雪乃は無表情のまま、ぽつりと。

「……知ってます。」

一朗が大笑いする。

「雪乃ちゃん、最強だな。」

蓮は雪乃の手をそっと握りながら、小さく呟いた。

「……家族になるから、ちゃんとみんなに話したかった。雪乃と一緒に未来を作るから。」

瑠璃がうるんだ目で笑う。

「蓮……成長したね」

陸が「幸せになー!」と大声を上げ、祐も「おめでとうございます!」と拍手。

楓と一朗も、優しく笑いながら拍手を送った。

こうして、湯田中家のリビングは拍手と笑い声に包まれた。
静かな二人の、大きな決断の夜。

そして未来を見つめる蓮と雪乃は、いつも通り淡々としているのに、二人の手はいつまでも離れなかった。


Fin
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