俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする

2

「月岡さん、来週の金曜って、もう予定入ってます?」

昼休み、社員食堂の窓際の席。
佐久間大和が、穏やかな笑みを浮かべてそう言った。相変わらず、声のトーンも目線も、静かで優しい。

「来週の金曜…いえ、今のところは」

「じゃあ、よかった。ずっと気になってたお店があって。一緒に行けたら、嬉しいなって思ってました」

「……!」

言葉に詰まる。
これは“デート”って言っていいのかな。いや、まだたぶん、違う。けれど、特別な意図があることは、はっきり伝わってきた。

「ありがとうございます。行ってみたいです、そのお店」

「本当ですか。よかった」

ほんの少しだけ、佐久間さんの表情が和らいだ。
その笑顔に、少しだけ胸が熱くなる。

この人となら、穏やかに過ごせるのかもしれない。
駆け引きも、涙も、我慢も、きっといらない。
そう思った――でも。

(……バカみたい)

自分を叱りながらも、心の奥で微かに疼く、何かを押し込める。

来週の金曜日。
それは、やっと一歩を踏み出そうとする日だと思った。
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