俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする
「佐久間さんって、ほんと誠実よね。いい人見つけたじゃない」

ランチを終えた同期の何気ない一言に、私は少しだけ頬を染めた。

「まだ、そういうんじゃないけど……でも、うん。すごく、ちゃんと向き合ってくれる人」

「それ、いい恋になるやつじゃん。がんばってね、応援してる」

素直に嬉しかった。
誰かにそう言ってもらえるくらい、私は変わってきたんだ。

(次、会えたら……ちゃんと、自分の気持ちを伝えよう)

“この人と、向き合ってみたい”と。
ようやく、そう思えるようになってきた。

そう、思っていたのに。

「――あ、そうだ。聞いた?」

「……なにを?」

「藤堂、アメリカの出向から、帰ってくるらしいよ。来月から、営業部に復帰だって」

「……え」

時間が止まった気がした。

(……うそ。なんで今……)

3年ぶりに聞いた、その名前。
あの夜、自分から「もうついていけない」って言って、すべてを断ち切ったはずだったのに。

(やっと、前を向こうとしてたのに……)

胸の奥で、ずっと眠っていた何かが、音を立てて目を覚ます。
懐かしい痛み。苦しいのに、忘れられなかった熱。

佐久間さんのやさしさを思い出す。
でも、同時に脳裏に焼きついた、あの視線も消えなかった。

(来ないでよ……)

そう願ったはずなのに。
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