俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする
藤堂side
― あの日から、止まったままだ
出向の辞令が出たとき、最初に思ったのは――
「これでようやく、追いつける」だった。
社内でも一目置かれる存在になりつつある瑞希。
頑張ってる姿をそばでずっと見ていたから、俺も負けたくなかった。
だけど、心の奥底で、それ以上に強く思ってた。
“もう、手放したくない”
だから言ったんだ。
「一緒に来てほしい」って。
……笑われた。
あの瞬間、胸の奥で、ガチャンと音がした気がした。
「私は行かない。仕事、続けたいから」
わかってた。
瑞希がどんなに仕事に誇りを持ってるか、知ってた。
だけど、それでも――
たった一度くらい、俺のために手を伸ばしてくれたらって。
そう、期待してしまったんだ。
わがままだったのは、俺のほうだ。
キスをしたけれど、彼女は目を閉じなかった。
温度のない唇に、これが最後なんだと悟った。
「じゃあな」
ドアを閉めるとき、背中からなにか引き剥がされるような音がした。
出向中、何度も連絡しようとした。
どんな言葉をかければよかった?
「寂しい」?「戻りたい」?
笑われるのが怖かった。
振り返った自分を、瑞希が冷めた目で見るんじゃないかって。
結局、三年間、一度も連絡をしなかった。
仕事で成功して、賞もとって、評価も上がった。
誰もが俺を認めてくれる。
でも――
帰国して彼女の姿を見た瞬間、全部嘘だったとわかった。
あの日から、俺の中の時計は、ずっと止まったままだった。
なんで、あのとき強引にでも連れて行かなかったんだろう。
この“止まっていた時間”が、今、再び動き出そうとしている。
けれどその針は、彼女の隣に戻れる方向に、進んでくれるだろうか――
― あの日から、止まったままだ
出向の辞令が出たとき、最初に思ったのは――
「これでようやく、追いつける」だった。
社内でも一目置かれる存在になりつつある瑞希。
頑張ってる姿をそばでずっと見ていたから、俺も負けたくなかった。
だけど、心の奥底で、それ以上に強く思ってた。
“もう、手放したくない”
だから言ったんだ。
「一緒に来てほしい」って。
……笑われた。
あの瞬間、胸の奥で、ガチャンと音がした気がした。
「私は行かない。仕事、続けたいから」
わかってた。
瑞希がどんなに仕事に誇りを持ってるか、知ってた。
だけど、それでも――
たった一度くらい、俺のために手を伸ばしてくれたらって。
そう、期待してしまったんだ。
わがままだったのは、俺のほうだ。
キスをしたけれど、彼女は目を閉じなかった。
温度のない唇に、これが最後なんだと悟った。
「じゃあな」
ドアを閉めるとき、背中からなにか引き剥がされるような音がした。
出向中、何度も連絡しようとした。
どんな言葉をかければよかった?
「寂しい」?「戻りたい」?
笑われるのが怖かった。
振り返った自分を、瑞希が冷めた目で見るんじゃないかって。
結局、三年間、一度も連絡をしなかった。
仕事で成功して、賞もとって、評価も上がった。
誰もが俺を認めてくれる。
でも――
帰国して彼女の姿を見た瞬間、全部嘘だったとわかった。
あの日から、俺の中の時計は、ずっと止まったままだった。
なんで、あのとき強引にでも連れて行かなかったんだろう。
この“止まっていた時間”が、今、再び動き出そうとしている。
けれどその針は、彼女の隣に戻れる方向に、進んでくれるだろうか――