俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする

25

「やっぱり誰かアメリカに出向するらしいよ」

隣の席で、誰かが小声で話しているのが聞こえた。

「やっぱり、藤堂さん?」「まあ、パイプあるしね」

その言葉に、心臓がひゅっと縮んだ気がした。

──やっぱり、そうなるの?

藤堂の様子が、少し前からどこかおかしかった。
優しいのに、どこか遠くを見てるような目をすることがあった。

私はまだ聞いていない。
というより、聞くのが怖くて、聞けないでいた。

(言ってほしくない。だけど、もし本当なら──)

また、私は置いていかれるの?
また、何も言われないまま…?

藤堂の背中が、すっと遠くに離れていくような気がして、
私は手元の書類に視線を落とした。

視界がじんわり滲む。

隣の席では、まだ噂が続いていた。
でも私は、何も聞こえていないふりをするしかなかった。
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