好きとキスの嵐
部員の皆は、俺が仲野のことを好きだって、ほぼ気付かれていたから、休憩終わりに二人でコートに戻ったら、すぐに「やったな、大智!」「漢気見せられたかー?」なんてそれぞれに声を掛けられた。


俺はそんな皆の声掛けに、少しだけつん、としつつも…。


「仲野はもう俺の彼女だから、必要以上に近寄んな。減る」


と、言った。

一瞬、その場がしんっ、と静まり返ったけれど、一拍置いて、どっと笑いが起きて、

「うぉー!大智、重ー!てか、心狭いっ!」

「当たり前だろ!何年間初恋引き摺ってたと思ってんだよ」


と言ってから、彼女の方も見て…。


「仲野も、だめ。ほんと減るから。自分の可愛さ自覚して」

と、釘を刺した。

仲野は、あ、とか、う、とかしか言ってなかったけど、その頭をぽん、と撫でると静かにこくん、と首を縦に振った。


もう、ホントは誰にも見せたくないくらいなんだ。
でも、最初からこんなに重い感情を彼女に出したら、流石にドン引きされること間違いないから、今は辞めておこうと思ってる。

今は…。

それにしても、さっき触ってめちゃくちゃ驚いたけど。


なんなの?あの細さは?

え?

折れる?

つーか、毎回思うけど制服着てても、ジャージ着てても、なんであんな細いわけ?


ねぇ?

あんなに細くてどこに内蔵とか入ってんの?

頭の中は疑問と焦りでぐるぐるしてる。

取り敢えず、帰り道は彼女に許可を取って、なるべく力を入れずに手を繋がせて貰おう…。


そうだよな。

身長もあんなにちまっこいんだから、俺というかその辺の男子と比べちゃ駄目だよな。

なんかもう……色々やばい。

…。
こう見えて、俺も健全な男子だから。


「おい!大智!ぼーっとしてないで、練習始めるぞ!」


そんな声に、ハッとして俺はコートに入った。


一応、俺はオールラウンダーだ。

で、今日はミドルブロッカーポジションに入った。

でも、俺のトス上げは結構評価が高いみたいで、監督から言われたら、セッターを任されたりすることも。

あの、「トスの魔術師」な選手みたいになれたら、いいなー…とか思いながら、トスの練習をしていたりもするけども。


ピーッ!

そして、監督が練習試合の合図を鳴らした。

俺は、ボールに集中して、その日の練習を無事に終えた。

「おっつー」
「おー、おつかれさーん」
「あっちぃから、ハードだったなー、今日」

等々。

ガヤガヤしながら、ロッカールームから出てくると、ジャージから制服に着替えた彼女が、そこに待っていてくれていて。


「ごめん。帰りの約束してなかったのに…待たせた」


そう言ってしょげると、彼女はふふふ、と笑って近寄ってくる。

「宮崎くんのこと、待ってるのって、なんかいいね。彼カノみたい」

それを聞いて、昔ながらのベタな「ズッコケ」をした俺。


「みたい、じゃなくて、そう、なんだよ?今日告白してオッケーくれたよね?…え?違った?夢?」


焦ったようにペラペラ喋る俺を、きょとんとした目で彼女は見つめてから。

「ご…ごめん、なんか…恥ずかしくて…」

と、もじもじと赤くなった顔を俯いてから、そう言うと小さい声で、

「これからもこうやって待ってても、いいかなぁ?」

と、言い出した。


「や、逆にいいの?仲野が遅くなるけど…や、勿論家まではちゃんと送るけど…!それ、俺得にしかならなくない? 」

「え?私得の方が、絶対に強いよ?」


と、張り合った。


いちいち、可愛いのが心臓に悪い…。

「あのさ、明日から一緒に登下校しない…?」

話を逸らすのに、そう提案すると即答でOKが出て、俺は心の中で大きくガッツポーズをした。
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