あなたに恋する保健室
 放課後を報せるチャイムが鳴り、遠くの教室から生徒の元気な声が聞こえ始める。
「じゃあ帰るね。せんせ、また明日〜!」
「はーい、気をつけてね」
 氷室さんは元気よく手を振って、保健室を去っていった。
「はぁ……」
 私はデスクに突っ伏して、己の弱さを痛感しているところだ。
 氷室さんの過去に触れる重要な場面で、受け止めるはずの私が何もできなかった。
 そんな思いばかりが残っている。
「もっと成長しなきゃ」
 せっかく話してくれたのに、私が弱いせいで彼女の感情の表出を邪魔してしまった。
 あの頃の私とちっとも変わらない。
 後悔してもしきれない無念さ。
 歯を食いしばって、涙を堪えた。
 ひとりでいるとグダグダと考えてネガティブ思考に陥ってしまうのが私の悪いところ。そんなのもわかっている。わかっているけれど……。
「そんな顔してどうした?」
「京ちゃ……あ、舘山先生……どうして」
 私は突然聞こえた京ちゃんの声に驚いて勢いよく全身がビクついてしまった。
「どうしても何も、俺いつもこのくらいの時間に来てるし。ノックもした。あと、その呼び方、いいだろ別に。もう放課後だし」
 ちょっと不貞腐れたような少年風の言い方が、本当に可愛らしい。なんだかそんな京ちゃんを見て癒された。
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