あなたに恋する保健室
「これが俺なりの、優希への寄り添い方だ。素直に受け取っておけ」
「うっ、ふぐっ……うぅ……」
 こんな素直に男性の前で泣いたことなんてなかった。
 独りで泣いてスッキリすることはあったけど、誰かに思いを打ち明けて涙を流すこの安心感は知らなかった。
「京ちゃん……」
「何?」
「もっと……してほしい……」
「はいよ」
 今だけは、素直に甘えてもいいと思えた。
 初恋のあなたにまた恋をした。
 私の過去ごと包み込んでくれるその優しさに、私は単なる初恋の相手としての憧れではなく、『今のあなた』を好きになったのだと確信したのだった。

「私、氷室さんとちゃんとお話したいと思う。それが、看護師として働いてきた私だからできる保健室の先生の役割だと思うの」
 病棟とクリニックを経験して、私はもっと身近な人のSOSに手を差し伸べたいと思った。
 そんな時に出会ったのが養護教諭だったんだ。
「おう。氷室の担任は俺だから、必要な時はちゃんと呼べよ?」
「うん。その時はお願い。でも今は、私とあの子ふたりで向き合っていきたいと思う」
「わかった」
 これは、過去の私が歩み出すために必要なこと。
 保健室で彼女とよく接する、養護教諭の私にしかできないことなんだ。
< 31 / 56 >

この作品をシェア

pagetop