あなたに恋する保健室
「その反応、まだまだ先って感じかな〜。冗談冗談」
 私みたいな大人をからかうのが上手い子だ。
 でも、そのおかげで雰囲気は柔らかくなった。
「この間話した続きをしたいの。弟さんと氷室さんのお話のこと、かな」
「……うん」
「この間はごめんなさい。私、上手く氷室さんの思いを受け止められなくて……」
 ここは正直に伝えたかった。
 相手が子どもであれ、己の悪いところはしっかり謝る。それができなければ真正面から思いを受け止めることなんて出来ない。
「いやいや! なんで先生が謝るの!? 私、あんな風に学校の先生に話したのなんて初めてだったし。むしろ……感謝というか……ありがとうございました」
 氷室さんの表情はいつもの気さくな笑顔から一変して、真剣そのものだった。
「話して気持ちが楽になるとか整理がつくとか、そういうのはあった?」
「うん」
「なら良かった」
 私は安堵した。もし話すことで心がさらに辛くなるようなら、私が彼女の心をより苦しめたことになってしまうから。
「氷室さん。あなたのお話聴かせてほしいの」
 私がかつて京ちゃんに救われたように、今度は私がこの子を救いたい。寄り添いたい。
 だから、もう逃げない。
「はい、お願いします」
 丸まった金太郎を柔らかく手のひらに乗っけながら、氷室さんは私と話すことに承諾してくれた。
< 33 / 56 >

この作品をシェア

pagetop