あなたに恋する保健室

第5章 京介side

 今日も天気がいい。
 外では体育の授業か。懐かしいな。
 今年の春から俺の幼馴染で初恋の相手である花田優希が養護教諭として同僚となってからは毎日が楽しい。
「はいじゃあこの間やった小テスト返しから。ミクロメーターの読み方は実験もやったしみんないい感じだったぞー」
 高校一年生の生物基礎の授業。
 今の単元は生物というより生物の特徴についてがメインだから、どうしてもイメージしにくくて面白みに欠ける気がする。
 生徒たちも強制的に授業させられているって気持ちになると最悪だ。俺がそうだったから。
「解答配るから、それ見て各自復習しておくように」
 こう言っても復習しないだろうけれど、あくまで宣伝程度に。
 授業もどうやれば面白いのか試行錯誤した結果、ネット上にアップされるショート動画の構成を少々真似している。
 端的にいちばん大事なのはどれかを冒頭で全部言ってしまう戦法。
 その後は興味があるところだけ聞いてくれ。そんなスタイル。どこが面白いのかやテストに出やすい部分は基本的に明確にして言う。
 まあそんなこんなで教師歴は早くも十年目に突入だ。
「テスト、名簿一番から順に取りに来て」
 俺がそう呼びかけて次々と取りに来る生徒たち。
 少し時間はかかるが、テストで良かったところや苦手だと自由欄に書いてくれたところに関してアドバイスを軽く話しながら返す。
 あくまでうざったくならないように。
 今はそういうのも考えなくちゃいけない時代だから、それに適応しようと必死だ。
「テスト全員に返却されたかー? はい、みんなに返ったようなので授業に入るぞ。今日は新しい内容に入るぞ──」
 ホワイトボードにパワーポイントを映して今日の授業の概要を説明する。
 なんだかんだ真剣に聞いてくれる生徒たちが、今日はやけにざわついていた。
< 48 / 56 >

この作品をシェア

pagetop