あなたに恋する保健室

第6章

 時は巡り、季節は夏の盛りを迎えた。
 学校は絶賛夏休み中。
 それでも生徒たちは部活動や講習でほぼ毎日学校にやってくる。
「せんせー、おはよー」
「氷室さんおはよう。今日も講習? 暑いから水分補給しっかりね」
「はーい」
 氷室さんは夏休みの講習を教室で受けられるようになってきていた。
 授業前にこうして私に顔を見せに来てくれる。
 一学期から徐々に教室に行く時間、回数を増やしていって、今では講習を最初から最後まで教室で受けているそうだ。
「今日も暑いねぇ」
「そうだねぇ。あ、ねぇ先生! この間クラスの友達とゲーセン行ったんだけどさ──」
 教室登校が増えてから、会話の内容もクラスにできた友達との話が多くなった。
 本来であれば、本人の希望が叶って教室に戻れるのは喜ばしいこと。
 保健室卒業がこんなにも寂しいものだなんて思わなかった。
 それだけ思い入れが強いのかもしれないけれど。
 私は彼女に、何かいい影響になれてなのかな。
 そんなことをたまに思い返す。
「さてと、物品整理でもするかな」
 夏休み明けには中学三年と高校二年で修学旅行がある。
 私も養護教諭として同行するために、アレルギーや持病がある子をリストアップして注意事項や対処方法などを新しく作っている最中でもある。
 一応、持ち出し救急箱も持っていくため、その整理でもしようとしたのだ。
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