オフィスでは忠犬、でも二人きりになると獣でした~年下部下の甘すぎる独占愛~
あの夜以来、私は――藤堂君とふたりきりになるのを、無意識に避けていた。

近づけばまた、あの目で見られる気がする。

あのキスの熱を、思い出してしまう。

……だけど、避けてばかりもいられない。

「誰か、車出して!」

忙しいスケジュールの中、いつものように声をかけると――

「はいっ!」

手を挙げたのは、よりによって藤堂君だった。

……最悪のタイミング。

ここで「他の人で」と言えば、さすがに怪しまれる。

仕方なく、私は彼の運転で取引先へ向かった。

「では、本日はありがとうございました。またよろしくお願いいたします。」

いつもながら、取引先相手には完璧な笑顔。

礼儀正しくて、感じが良くて、

本当に“仕事ができる、わんこ系好青年”。

……でも私には、もうその顔を見せない。

社用車の扉を開けてくれたその手も、さりげなくエスコートする仕草も、どこか獲物にじわじわと迫る“男の手”に思えてしまう。
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