オフィスでは忠犬、でも二人きりになると獣でした~年下部下の甘すぎる独占愛~
「ちょっ……藤堂君、ちょっと待って……!」

「歩けないなら、運びますよ?」

冗談めいた口調なのに、支える腕は本気だった。

その体温と密着に、私は完全にペースを乱されていた。

そのまま藤堂君は私を外まで連れ出し、いつの間にかタクシーまで呼んでくれていた。

「ありがとう、藤堂君。」

お礼を言った瞬間、彼がふと顔を寄せてくる。

「……大人しくしてないと、襲いに行きますよ。」

ドキッ、と胸が跳ねた。

「……え、ええっと……」

まともな言葉が出てこない。

なのに彼は、いたずらっぽく微笑んで――

「なーんてね。冗談ですよ。」

いつもの“わんこ系”の顔に戻っていた。

それでも。
さっきの一言が、頭の中をぐるぐる巡って離れない。

――襲う。

そんな言葉、最後に誰かに言われたのは、いつだったろう。

社会人になって、仕事に必死で、失恋して、誰かを好きになるのが面倒になって。

気がつけば、「恋なんて、もういい」と思っていたのに。
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