オフィスでは忠犬、でも二人きりになると獣でした~年下部下の甘すぎる独占愛~

第2話 ふたりきりの空気

そして、彼の“野獣”が目覚めたのは、ある夜、ふたりきりで残業していた時だった。

今夜に限って他のメンバーは全員退勤。

あいにくのタイミングで、残っていたのは私と藤堂君だけ。

「……あっ、確かコピー用紙がもう無くて。」

コピー機の在庫棚を見て、私は小さくつぶやいた。

「俺、持ってきますよ。」

振り返った藤堂君がそう言った時――

その声が、妙に低くて、深くて、耳の奥に残るような響きをしていた。

「お願いね。」

何気なく返したけど、心臓がトクンと跳ねた。

たかがコピー用紙。されど、彼の声ひとつで頭がぐらつく。

……どうして?

私は35歳。彼は30歳。

5歳の年下、部下、それも甘え上手な“わんこ系”。

そんな相手を――

どうして今、こんなにも“男”として見てしまってるの?

理性が危うい。

だって、たった今の声が、耳じゃなくて、肌に触れたみたいに――熱いから。
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