お飾りの妃をやめたら、文官様の溺愛が始まりました
「ところで――」

私は姿勢を正し、言葉を投げた。

「あなたは、私の部屋に何をしに?」

景文は、まるで自分の部屋であるかのように、すっかり落ち着いた様子で鏡台の椅子に腰を下ろす。

「皇帝のご寵愛を受けていないお妃様が、どんな方なのか。ちょっと、興味があったのです」

「……は?」

眉がぴくりと跳ね上がるのを、自分でも止められなかった。

「それで? 実際に“見てみた”感想は?」

問い詰めるような声に、景文はにこりと笑った。

「――十分に、美しいお姿をしておられる。」

「……」

その一言が、やけに素直に響いたのが悔しかった。

「何故、ご寵愛がないのか。まったく理解に欠けますね。」

景文は頬杖をついたまま、まっすぐにこちらを見つめてくる。

その瞳に浮かぶのは、からかいではなく、純粋な興味と惜しむ気配。

私はほんの少し、戸惑った。

いつぶりだろう。

誰かに、そんなまなざしを向けられたのは――。
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