姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

Ep.30 なんで怒ってるの


教室に入った途端、クラスメイトたちが一斉に私に注目した。

「うわ、本当にやってんだ。」
「イメージ崩れるよなぁ。」

チクチク刺さる陰湿な小声。

普段も男女問わず熱い視線を向けられるわけだけど、今回はなんか違う。


訝しげだったり心配そうだったり、汚いものを見る感じだったり、とにかくネガティブな視線だ。


訳もわからないままとりあえず席に向かう。

机にカバンを置いて、机に向かっていた視線を前へと移すと、教室前方の黒板にとんでもないものが書かれていた。


“尻軽女” “今すぐH2Oから離れろ” “男好き”


私を攻撃する言葉と脅迫めいた台詞のオンパレードの黒板アートの中央に、A4用紙に印刷された写真が2枚。

ひとつは林間学校の帰りのバスで、不覚にも広瀬真と寝落ちした時の写真。

もうひとつは、この間図書館で近江涼介と会った時のもの。
図書館から2人で出てきたところを隠し撮りされている。


(な、な、なにこれ……!?)


夏なのに背筋がぞわっと冷える。


……いやいや。
落ち着け、こんなこと前なら日常茶飯事だった。


私がびっくりして固まっていたところに、気怠そうな広瀬真が入ってきた。

瞬間、広瀬真にクラスメイトの視線が一挙に集まって、奴は怪訝な顔をする。


その異様な空気に「何かしたか」とでも言いたげにすぐに私の方を見ると、凍りついている私の視線が黒板に向かっているのに気づいてそっちを見た。


「な……っ、んだよこれ!
おい誰だこんなくだらねーことしたの!」


広瀬真も一瞬驚いたような顔をしたけど、すぐに猫目をさらに吊り上がらせて乱暴に写真を剥がして握り潰す。

そしてすぐさま黒板消しを手にして攻撃的な文字も全て消してしまった。


ガン、と黒板消しを乱暴に投げた音が静まり返った教室に反響する。


広瀬真がこっちに向かって来たかと思うと、勢いよく私の手首を攫って引っ張る。


「――姫、行くぞ。」

そのまま手を引かれ、教室をから一歩外へ出る。

広瀬真は教室にいたクラスメイトたちを眉毛と目がくっつく勢いで力強く睨みつけてから、大きな音を立てて教室の戸を閉めた。
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