姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
「このギスギスしてるくせに同じ空間、しかも近距離にいて怒ってるアピールし合ってるとこ、ホントお子様だよね〜。」
近江涼介は広瀬真の隣の席に、榛名聖はソファの空いている方、即ち私の隣に座る。
榛名聖がいる場所は私と広瀬真のちょうど間にあたる場所でもある。
そこに座るとは肝が座っているというべきか、空気が読めないというべきか。
近江涼介はと言えば、興味なさそうな顔で持ち込んだ本を読み始めている。
「それでひーちゃん、この後どうするの〜?
今のとこ噂では、まーくんと涼ちゃんを誑かす稀代の悪女になってるみたいだけど。」
近づいたら噛みつかれそうな狂犬状態の私に、全く臆することなく榛名聖は問いかける。
そのゆったりと平和そうな口調に少し毒気を抜かれて、私は荒っぽいため息をついて口を開いた。
「当然やり返してやるわよ。やった奴が最も悔しがる方法でね!」
「だからなんで戦う気満々なんだよ。
誑かせてねーことを全校生徒に謝罪と訂正して回れ。」
憎たらしいほど低い広瀬真のツッコミに反射的にそちらを睨む。
あっちもあっちで伏し目がちにこっちを睨んでいたようで、目が合った瞬間にバチバチと火花が散った。
「カルシウム足りてないバカには話していないですぅ。
っていうか“誑かせてない”って何。
まるで私にその能力がないみたいな言い方。
違いますー、アンタらのシュミがおかしいだけですー。」
顎を突き出すようにした表情と、尻上がりな言い方で煽ったのに一瞬睨む目に力が入っただけで無視された。
ム・カ・つ・く〜!
見てなさいよ、絶対に反撃した上で犯人捕まえてやるんだから!!!
カーッと再熱する怒りにヒクヒクと表情が引き攣るのを、近江涼介が何かを見透かす様に横目で見ていた。