姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
AM 8:20
AM 8:20
侍っていたジャガイモたちを適当にあしらいつつ教室へ入ると、まずは教室の一番後ろのドア近くの席にすでに座っている近江涼介の元に行く。
「近江くん♡おはよう♡」
きゃぴ♡とちょっとトーンを上げたかわいい声とエンジェルスマイル。
ちなみに私が近江涼介に近づこうとしたら、ジャガイモたちは蜘蛛の子散らすようにいなくなっていった。
要するに、取り巻き剥がしに近江涼介はうってつけってわけだ。
壁に向かって頬杖を突き、もう片手で本を持ち読書に勤しむ近江涼介は私の挨拶に少しも反応してくれない。
原因はわかっているのだけど、わかっていいるからこそやりたくなるというものだ。
「今日もいい天気だね、近江君くん♡
近江くんのご機嫌はいかが?ねー、近江くん♡」
これにも一切応じない。
(おーおーやんのか?受けて立ってやろうじゃない。)
「絶対に反応しません」という強固な姿勢にこちらの意地も刺激される。
耳に思い切り息でも吹きかけてやろうと大きく息を吸い込んだ時、後ろから憎たらしい声がした。
「何朝からバカなことやってんだよ、ブス。」
振り返るとスクールバッグの肩ひもを片方ずり落とさせて、広瀬真が心底呆れた顔して立っていた。