姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.16 バカとへらへら
「……広瀬くんは一体何をしているのかなぁ?」
私が寄り道している間に、火起こし場では既に鍋がセットされ、グツグツと煮立っている。
その隣で金髪は、一生懸命もう一つの鍋をかき混ぜていた。
生米だけが入った鍋を。
「は?カレーに白飯なきゃ食えないだろ、米炊いてんだよ。
常識で考えろブース。」
「いやお前がな?バーカ。」
反射的に悪態が口から出てきちゃったけど、今のはもちろん小声である。
真剣に米を炒め続けるこのバカが、一応学校の王子みたいな存在だからって遠慮して何も言えなくなっている班のメンバーが周りにいるから。
――にしても周りのやつも生米を火にかけ始めた時点でツッこみなさいよ。
何も恐れ多くないわ、こんなびっくり馬鹿。
「……広瀬くん、聞いて?
生米は水を入れて鍋に蓋をして炊かないと、ご飯にならないの。」
私にバカと言われて激昂寸前の金髪の肩を、私は哀れみに満ちた目で見つめながらポンと叩く。
「…マジ?」
雷にでも撃たれたような顔で本気でショックを受ける金髪。
嗚呼、ここにいたのね。嘘みたいな料理音痴。
米を改めて炊く時間などなく、私達の班はカレーをルウだけで食すことになった。