姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
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「涼ちゃん、ひーちゃん、こっちこっち〜。」
知らない間に少し離れたところへ行っていた榛名聖が、手を振っている。
その後ろには、カラフルで騒々しいゲームコーナーが広がっていた。
「見てよ。まーくん、ゲーセン初めてなんだって〜。」
榛名聖の側まで行くと、すぐそこのUFOキャッチャーと金髪が睨めっこしている。
「なんだコレ……
あんなちっさいアームでこんなでかいの捕れんのか?無理じゃね?」
「UFOキャッチャー知らないとかどこの貴族よ。
こういうのはね、小銭吸い取りマシーンなの。ほら見てないで行くよ。」
UFOキャッチャー相手に、明らかな好奇の眼差しを向ける金髪の首根っこを掴んで引っ張る。
「待て」と抵抗してUFOキャッチャーにしがみつく金髪の横で、小銭が機械に落ちる音がした。
――ピコピコと軽快な電子音と、カチャリと短く鳴るボタン操作音。
操られたアームは的確にデッカいひよこの体を掴んで、取り出し口まで運んでいく。
まるで手足かの様にアームを自在に操っているのは、なんと近江涼介だ。
その様子を私と金髪はあんぐりと口を広げて見ている。
「ん。やる。」
ぼてんと落ちてきたヒヨコを近江涼介は取り出して、金髪の腕に抱かせる。
金髪の瞳がまた輝いた。
「すげーよ涼介!俺にも教えろ!」
近江涼介と金髪の2人がUFOキャッチャーと向き合ってしまった。
(何あの異様な盛り上がり……。寒っ。)
ドン引きの私は、そっとその場を離れることにして後退りした。