姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
途端に張り詰める空気。
広瀬真が「それ言うのかよ」みたいな顔をしている。
それなのに私と近江涼介は同じようにクールな無表情だった。
「知ってるわよ。朝のうちに私から近江涼介に言ってあるから。」
「……聖のキスなんて挨拶より軽いだろ。」
ハイ、解散。とばかりにそれぞれに窓の外を見る。
思った反応を得られず榛名聖は唇を態とらしく尖らせた。
……と、近江涼介の視線が榛名聖の方を向く。
一瞬だけど、静かな怒りが滲む目だ。
「……あはっ。ごめんねぇ、涼ちゃん。」
「だからいいっていってるでしょーが。」
「なんでお前が答えてんだよ、ブス。」
束の間の“いつも”にホッとする。
明るい私達の喋り声を、爽やかな夏の風が攫っていった。