姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
「ガッチガチの懐古主義なんだよ。
“跡取りは絶対に長男”。“女は良妻賢母であれ。3歩下がって男を支えろ”ってクソみたいな家なんだよ。」
「ああ、なんかそうっぽいね……?」
金髪父の威圧的な言動を思い出し、納得して頷く。
金髪は憎らしそうに、苦しそうに池を見つめている。
「俺は生まれた時から跡取りとしての教育を受けてて、わがままどころか口答えも一切許されず育ってきた。
今までも父親の言う通りの学校通って、習い事して…大学もその後の進路も全部決められててさ。
――だから高校生活くらいは最初で最後の好きにさせてくれって言って、色々条件ついたけどまあ、今ってワケ。」
なるほど。
それで学校ではチャラチャラ、キャンキャン、わーわーだったのか。
家では出せない自我を、あの場所で発揮してたってことね。
「好きにしてる3年間で状況変えようと思ってたけど、入学早々婚約話を持ち込まれるし。
……結局跡取りの立場からは逃げらんねぇか。」
俯いて自虐気味に笑う金髪。
(……あ、悲しそうだ。)
立派だけど温度のない庭園を背景に立ち尽くす金髪が、ひとりぼっちに見える。
……もしかして、ずっとそうやって独りで我慢してきたの?
普段の強気な態度とのギャップに胸がモヤモヤする。
それを振り払うように私は金髪の手を取った。
「な゛っ……!?離せよ、ブス……!」
唐突な私の行動に、金髪は驚いてちょっと赤くなる。
すぐに振り解こうとするのに抗って、夏なのに冷やりとするその手をギュッとキツく握りしめた。
「まだあと2年半はあるよ!バカ。」
その言葉に金髪は目を丸くして固まる。
暗い表情を一先ず吹き飛ばせたことに、私は気が良くなってにんまりと笑った。