誰にも言うなよ ~結婚式の後始末~
「明巳さんのいる場所で、一緒に暮らしていきたいなって思ったんです」

 明巳がいきなりほたるを抱き上げる。
 子どもに高い高いするように。

 ――えっ?

「こ、怖い怖い怖いっ、明巳さんっ」

「大丈夫だっ。
 やさしくするからっ」

「違うっ。
 下っ、ここ、高層階っ」

 手すりから落ちるっ、とほたるは騒ぐ。

「大丈夫だ。
 落ちるときは一緒だ!」

 なにも大丈夫じゃないです~っ!
と叫びかけたが、

 待てよ。
 叫んだら、近所迷惑だな、とほたるは冷静に考えてしまった。

 すると、それを了承の合図ととったのか、明巳はほたるをお姫様抱っこに抱え直し、こめかみにキスしてきた。

「いや、あの……

 黙ったからって、オッケーってわけではないので……」

 そうか、わかったと言いながら、明巳はほたるを抱いたまま、部屋の中に戻る。

「あっ、あのっ、もう帰りましょうっ」

「そうだな。
 明日の朝な」

 そう言って、明巳は小器用にガラス戸を閉める。

 ほたるを近くのソファに下ろした。

 横に座ると、じっと見つめてくる。

「……あのときと同じだな」

「え?」
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