誰にも言うなよ ~結婚式の後始末~
 話を聞いてみると、彼は家が欲しい杉田さんの息子さんだった。

「すみません。
 うちの父がうるさく頼んだみたいで」

 ああいえ、こちらこそ、すみませんっ、と二人、ペコペコしてしまうのは、あの家の保存状態がお世辞にもいいとは言えないからだ。

 学生時代、芸術家を気取っていた仲間たちとの思い出の場所だったんだ、と杉田の父は、あの家を懐かしんでいるらしい。

「父に写真を見せられて、何度も昔の話を聞くうちに、私もなんだかあの家が好きになって。
 一度、入ってみたいと思ってたんです。

 今度――」

 その先の言葉を明巳が先に言った。

「今度、ぜひ、お父様と遊びにいらしてください」

「ありがとうございますっ」

 そんな方々を、あの状態の家に呼んでいいんですか……?
という目で、離れた場所から、じいや、兎川正秀(とがわ まさひで)が見ていた。

 ほたるは、くいくい、と明巳の袖を引く。

 それだけで伝わったようだった。

 明巳は、
「いいのか?」
とほたるに訊いてくる。

 ほたるは、こくりと頷いた。

 明巳が杉田に向き直る。

「杉田さん。
 あの家、お父様にお譲りします」

「えっ?」
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