誰にも言うなよ ~結婚式の後始末~
結局、せっかく来たのだからとワインを買ってきて、夜景を眺めながら呑むことにした。
窓際にある、これもまた曲線が特徴的なテーブルで二人、向かい合う。
街の明かりを見下ろしながら、明巳は笑い、
「でもまあ、お前が家出したときはここにいるってわかってよかったな」
そうほたるに言った。
「そうですねえ。
連れ戻して欲しいときだけ、ここにいますよ」
とほたるは笑う。
落ち着くな。
いや、さっきはちょっと落ち着かなかったんだが――。
ここに入ったとき、部屋の綺麗さに、職場にいるみたいで落ち着かないなと思った。
だが、今はなんだか落ち着いている。
散らかっている家を片付けないのは、そこがプライベートな空間だと目で見ただけで、パッと認識できるから。
ここはだらしなく、くつろいでいい場所だとすぐに脳が認識して、休むことができるからだった。
職場でも実家でも、いつも人の目があり、緊張している――。
でも今、綺麗なこの家にいても、妙に落ち着いた。
なんでだろうな、と明巳は考える。