秘めた恋は、焔よりも深く。
龍之介は、離婚してからの十数年間、
一度も“恋愛”をしたことがなかった、と言えば嘘になる。
週末のジムでも、取引先のパーティでも、
彼に声をかけてくる女性は少なくなかった。
182センチの長身に、無駄のない身体。
バスケットボールと剣道で鍛えた背筋や腕のラインは、
スーツ越しでも十分すぎるほど視線を集める。
大人の余裕と冷静さを纏ったその佇まいは、
“甘い言葉を囁かなくてもモテる男”そのものだった。
だが、誰とも長くは続かなかった。
優しくはできる。
抱くことも、甘くすることもできた。
だが、心までは預けなかった。
深入りすれば、相手が期待する。
期待させたまま終わるのは、誠実じゃない。
そう割り切っていた。
だから、付き合うという言葉も、名前を呼ぶ頻度すらも、
どこか一定の温度以下に抑えていた。
だが今は、気づけば、まだ何も始まっていない佐倉美咲のことを、
何度も、何度も考えている。
名前を呼びたい。
目を合わせたい。
指先の先まで、自分のものにしたい。
それは今までの“つきあい”とは、明らかに違う。
一度も“恋愛”をしたことがなかった、と言えば嘘になる。
週末のジムでも、取引先のパーティでも、
彼に声をかけてくる女性は少なくなかった。
182センチの長身に、無駄のない身体。
バスケットボールと剣道で鍛えた背筋や腕のラインは、
スーツ越しでも十分すぎるほど視線を集める。
大人の余裕と冷静さを纏ったその佇まいは、
“甘い言葉を囁かなくてもモテる男”そのものだった。
だが、誰とも長くは続かなかった。
優しくはできる。
抱くことも、甘くすることもできた。
だが、心までは預けなかった。
深入りすれば、相手が期待する。
期待させたまま終わるのは、誠実じゃない。
そう割り切っていた。
だから、付き合うという言葉も、名前を呼ぶ頻度すらも、
どこか一定の温度以下に抑えていた。
だが今は、気づけば、まだ何も始まっていない佐倉美咲のことを、
何度も、何度も考えている。
名前を呼びたい。
目を合わせたい。
指先の先まで、自分のものにしたい。
それは今までの“つきあい”とは、明らかに違う。