朝まで、グラデーション
「さて、少し休憩したら片付けようか」
「やっぱりそうなるんだ。久しぶりに俺ら会ったのに」
「だってこの部屋、今日も散らかり具合がすごいよ。というか、今野の家に遊びに来たらの恒例行事だからね」
私は立ち上がると、台所の棚にある大きなゴミ袋を出した。ゴミ袋の場所は、私が数年前にここの大掃除をして、ここが良いと勝手に設置した場所から変わってない。
「今野は、どうする? 寝ててもいいよ」
「俺も一緒にやるよ……」
「やるの? あの時は気がついたら寝ていたのに」
私が大きなゴミ袋をパサッと広げながら言うと、今野は苦笑いしながら台所に立ち、辺りを見回す。
「とりあえず俺は、ゴミ集めるかな」
「そうだね、私は床に散らばってる、必要な物っぽいのをまとめるね」
「ありがとう」
私はリビングであちこち散らかっている服をとりあえず畳んで一箇所に集めた。
「うわっ、なんかヤバそうなペットボトル出てきた」
「えっ、何?」
今野がいる台所へ行くと、彼が持っていたペットボトルの賞味期限を見る。私は思わず吹き出した。
「賞味期限が二年前! 今野、私と会わなくなってからもしかして片付け一回もしてなかったりする?」
「いや、さすがにしてるわ。最近忙しくてさ……って、言い訳になんないよね」
彼は頭をかきながら、ちょっと照れたように笑う。
「今野は、片付け以外は完璧なんだけどね」
「何、俺、完璧だと思われてるの? 嬉しいな」
「でも片付けが……」
「いや、本気だせば片付けなんて楽勝だし」
「本当に? 無理っぽいなぁ」
「本当だから。美里、見てて? 俺、本気出すから」
煽るとこうやってムキになっちゃうところ、昔から変わってないな。
「私、片付け楽しくなってきた」
「俺もなんか、楽しい」
私の人生の中で片付けが楽しくなることなんて、なかなかないだろう。むしろ面倒だから、自分の家は余計な物を買わないように普段は気をつけている。楽しいのは、今野の家だから。
部屋を綺麗にする目的が一緒なのも何だか嬉しいし、それに、今の今野を知れるから――。
服をまとめた後は、漫画本やDVDが散らばっている床に目をやる。
「棚に戻せばいいだけなのに、何故床に無造作に置くの?」
デジャブ。前にこの部屋を片付けた時にも同じ言葉を私は言った。そして、なんでかな?ってその時に今野は言っていたっけ。
「なんでかな?」
あの時と同じ言葉が返ってきた。今野は今野のままで、それを知るたびに私は安心する。今野と仲が良かった頃と今の私の周りの環境は、がらっと変わってしまっていたから。
散らばった漫画本とDVD。あの時あったものと、なかった物もある。今野が何を読んで、何を観ているのかをさりげなくチェックして、頭の中に題名を叩き込む。それからひとつにまとめて棚に戻した。
そしてとても気になることもチェックする。女の気配があるかないか。直接聞けばいいのだけど、このタイミングで聞いてしまって、もしも彼女がいると直接聞いてしまったら、帰らないと行けない気がするし、何よりもショックを受ける自分が想像できる。
――だって、今野と再会して、まだ彼に対する想いが残っている自分に気がついてしまっていたから。
結局、洗面所やトイレの細かいところまで、女のいる気配を探したけれども何も出てこなかった。そもそも今野は彼女のことをとても大切にしそうだし、もしもいたなら私を家にはあげないか。それに、こんなに散らかってはいなさそうだな。だけど、好きな人とかいたら――?
いや、今は片付けに集中しよう。
今野も真剣に掃除をし、あっという間に踏み場のなかった床も綺麗になったし、部屋全体の見栄えも良くなった。ふたりで部屋全体の綺麗さを確認し終わると、目を合わせ、同時に微笑み頷いた。
*
「やっぱりそうなるんだ。久しぶりに俺ら会ったのに」
「だってこの部屋、今日も散らかり具合がすごいよ。というか、今野の家に遊びに来たらの恒例行事だからね」
私は立ち上がると、台所の棚にある大きなゴミ袋を出した。ゴミ袋の場所は、私が数年前にここの大掃除をして、ここが良いと勝手に設置した場所から変わってない。
「今野は、どうする? 寝ててもいいよ」
「俺も一緒にやるよ……」
「やるの? あの時は気がついたら寝ていたのに」
私が大きなゴミ袋をパサッと広げながら言うと、今野は苦笑いしながら台所に立ち、辺りを見回す。
「とりあえず俺は、ゴミ集めるかな」
「そうだね、私は床に散らばってる、必要な物っぽいのをまとめるね」
「ありがとう」
私はリビングであちこち散らかっている服をとりあえず畳んで一箇所に集めた。
「うわっ、なんかヤバそうなペットボトル出てきた」
「えっ、何?」
今野がいる台所へ行くと、彼が持っていたペットボトルの賞味期限を見る。私は思わず吹き出した。
「賞味期限が二年前! 今野、私と会わなくなってからもしかして片付け一回もしてなかったりする?」
「いや、さすがにしてるわ。最近忙しくてさ……って、言い訳になんないよね」
彼は頭をかきながら、ちょっと照れたように笑う。
「今野は、片付け以外は完璧なんだけどね」
「何、俺、完璧だと思われてるの? 嬉しいな」
「でも片付けが……」
「いや、本気だせば片付けなんて楽勝だし」
「本当に? 無理っぽいなぁ」
「本当だから。美里、見てて? 俺、本気出すから」
煽るとこうやってムキになっちゃうところ、昔から変わってないな。
「私、片付け楽しくなってきた」
「俺もなんか、楽しい」
私の人生の中で片付けが楽しくなることなんて、なかなかないだろう。むしろ面倒だから、自分の家は余計な物を買わないように普段は気をつけている。楽しいのは、今野の家だから。
部屋を綺麗にする目的が一緒なのも何だか嬉しいし、それに、今の今野を知れるから――。
服をまとめた後は、漫画本やDVDが散らばっている床に目をやる。
「棚に戻せばいいだけなのに、何故床に無造作に置くの?」
デジャブ。前にこの部屋を片付けた時にも同じ言葉を私は言った。そして、なんでかな?ってその時に今野は言っていたっけ。
「なんでかな?」
あの時と同じ言葉が返ってきた。今野は今野のままで、それを知るたびに私は安心する。今野と仲が良かった頃と今の私の周りの環境は、がらっと変わってしまっていたから。
散らばった漫画本とDVD。あの時あったものと、なかった物もある。今野が何を読んで、何を観ているのかをさりげなくチェックして、頭の中に題名を叩き込む。それからひとつにまとめて棚に戻した。
そしてとても気になることもチェックする。女の気配があるかないか。直接聞けばいいのだけど、このタイミングで聞いてしまって、もしも彼女がいると直接聞いてしまったら、帰らないと行けない気がするし、何よりもショックを受ける自分が想像できる。
――だって、今野と再会して、まだ彼に対する想いが残っている自分に気がついてしまっていたから。
結局、洗面所やトイレの細かいところまで、女のいる気配を探したけれども何も出てこなかった。そもそも今野は彼女のことをとても大切にしそうだし、もしもいたなら私を家にはあげないか。それに、こんなに散らかってはいなさそうだな。だけど、好きな人とかいたら――?
いや、今は片付けに集中しよう。
今野も真剣に掃除をし、あっという間に踏み場のなかった床も綺麗になったし、部屋全体の見栄えも良くなった。ふたりで部屋全体の綺麗さを確認し終わると、目を合わせ、同時に微笑み頷いた。
*