子を奪われた私が、再婚先の家族に愛されて、本当の母になるまで



 「……さむ……」

 春に産んだ子を奪われてから、半年以上が経っていた。
 季節は冬の入口で、風は骨を刺すように冷たい。

 厚手の外套にくるまっていても、足元から冷えは容赦なく上がってくる。
 旅装すらままならないまま追い出された身。足も痛むし、体調も戻っていない。
 なにより、心のどこかにぽっかりと空いた穴が、ずっと疼いていた。

 この半年、私は“誰の母”でもなく、“誰の妻”でもなく、“誰の娘”ですらなかった。
 まるで、この世界に私の存在など、最初からなかったかのように。

 「……どこに行けば、いいの……」

 かすれるように呟いた声は、霧の中に溶けていった。



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