君と青空
青空の初恋
帰りの会が終わった後、みんながどんどん帰って言ってる時。
椅子に独り座り、片付けをしている私の背中の方に手をやる二田先生。
「日奈、今日教育相談、学習室な。」
いつものあの笑顔で。
「はい…分かりました…。」
羽奈に先帰っててと伝えて、1年3組の隣の学習室に入り込む。
学習室の窓からは桜山中の隣のすっかり緑になった桜の木と徐々に雨がやんでってる空が見えた。
「おー、梅雨明けってホントやったんやな…。」
二田先生が独り言のように呟く。
「……」
沈黙が10秒ほど流れてからやっと二田先生が口を開く。
「……先生思うんやけど、教育相談紙に書いた『悩み無し』って嘘やろ?」
「…………え……?」
「先生さ、最近日奈が全然明るくなくなって、しかも笑わなくなってくのを見て不思議で仕方なかったんやて。」
「………………」
「日奈……。」
「羽奈も辛そうにしてたって高崎先生言ってたし……、誰に何されとるんや、」
「そんな大したことじゃ……ただのいじりですよ…」
「大したことじゃないだろッ!!」
声を荒げる二田先生。
「いじりではすまされないぞ、あれは……」
「あれは『いじめ』だぞ。」
「先生な、日奈がいつも涙我慢してるような辛そうな顔見てて、何があったかずっっと知りたかったんだよ。」
「でも日奈は和歌にさえも口をあまり聞かなくなって心を閉ざしていってるように見えた。」
「あと、帰る時や移動教室の時もいち早く教室から出て喋りたくとも喋れなかった。」
「昼休みも桜の木の前でずーっとぼーっとしていたよな……。声をかけようにもかけづらくて、こんなになるまで放っておくことになって……ごめんな…………」
淡々と喋っていった先生は徐々に震え始めた。
まるで涙を堪えようと必死になっているように。
私は……
私は…………
なんてことをしてしまったんだろう。
こんなに私の事を想ってくれた気にかけてくれた二田先生に。