ringには紅茶を添えて
リングケースを作品を置く木の棚に乗せ、彼が電話をかけはじめる。今日も子会社めぐりをしているうちの社長へだろう。
「はい、出来ました。
これからお客様にご連絡を、はい」
普段から言葉の少ない彼がぎこちない応答をするのを、私は愛おしく思って綿あめみたいにフフッと笑った。

結婚、とは何だろう。
自分を育んでくれた家庭を出、愛するひとと新しい家族になる。(不思議だ。そんなことがあるなんて)

天丼を出前してもらいキチネットで向かい合って食べた。
指輪の作業のない時は彼に食事を作ってもらうことの多い私だけれど、指輪が完成したあとはたいてい近くのそば屋から出前をしてもらう。
彼が作るのとはまたちがう甘いタレが美味しい。会話もなく黙々とたいらげた。

食べ終わったあと私は紅茶を入れた。
白いティーカップに氷砂糖をみっつ入れ、そこにあたたかい紅茶を注ぐ。
カチ、カチ、と氷砂糖が溶ける音がする。そこにクリームをたっぷり注ぐ。
お疲れ様のスペシャルティー。

「どうぞ」
「ありがとう」
普段は紅茶に何も入れないふたりだけれど、指輪が出来上がった日は特別だから。

「指輪を作らないか」
< 3 / 5 >

この作品をシェア

pagetop