もう女じゃないなんて、言わせない
わずかに驚いたような表情。そのあとに、ゆっくりとした頷き。

「……ああ。正直、そう思った。」

「そう。」

すると東條は、メニューをひょいと取って、次のおつまみに塩辛を頼んだ。

「男はさ、前の恋愛をちゃんと忘れてから、自分のところに来てほしいわけ。」

「そっか。」

私はなくなったグラスを眺めながら、静かにドリンクメニューを開く。

ビールの次、何を頼もう。

ちょっと強めのハイボールでもいいかもしれない。

「……でもね、女ってさ。別れた時点で、もう忘れてるんだよ。」

「え、うそでしょ?」

「ほんと。だから女は強いの。切り替えたら、スパーンって。」

「……厳しいっ!」

東條はわざと大げさに体をのけぞらせ、自分の胸の前で腕を交差させた。

防御ポーズ。小芝居に、つい笑ってしまう。

「だって、そうしないとやっていけないもん。」

「……マジで厳しいわ、それ。」
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