もう女じゃないなんて、言わせない
「優香。」

東條が立ち止まった。

私は彼の顔を見上げる。

「……そういうの、俺じゃダメかな。」

一瞬、理解が追いつかなくて言葉を失った。

でも、彼の目は――真剣だった。

「どういうこと?」

立ち止まったまま東條を見上げて、問い返す。

彼は、どこか気まずそうに頭を掻きながら言った。

「ほら、俺たち、定期的に会ってるじゃん?そういう時にさ、お互い……その、体を満たせば、いいわけだろ。」

軽く言ったつもりなのかもしれない。

でも、私の中で何かがすっと冷えた。

ため息が自然と漏れる。

「……もう40なのに、体しか求められないって、寂しいんですけど。」

そう言い捨てるようにして、私は東條の前を歩き出した。

ヒールの音が夜道にコツコツ響く。

でも、心の中はずっしりと重たかった。

追いかけてくる足音は聞こえない。

構わず、私は続ける。

「もうこんな歳だから……遊びは嫌なの。結婚に繋がる恋愛がしたいの。」
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