もう女じゃないなんて、言わせない
でも、そんなものよりも、今の私は、自分の鼓動の音しか聞こえていなかった。

緊張で喉が乾く。

けれど、手は……まだ、離されないままだった。

ふいに、東條が私の手を離した。

部屋の空気が、少しだけ重たくなる。

彼は黙ったまま、上着を脱ぎ、ネクタイを緩め、シャツのボタンを外していく。

露わになった肌に、無駄のない筋肉の影。

鍛えているのだろう。だらしないところが、どこにもなかった。

「シャワー、浴びるわ。一緒に浴びる?」

そう聞きながらも、彼の目はどこか優しかった。

私を急かすことなく、でもどこか“選択”を与えるように。

私は黙って、スカートのファスナーを下ろした。

――女、40歳。

一年も、誰にも触れられていない体。

でも今夜、それを終わらせる。

肌に触れる空気が少し冷たくて、

でも、東條の視線は明らかに熱を帯びていた。
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