もう女じゃないなんて、言わせない
食事が終わって、ふと目線をレジ横のモニターに向ける。

お会計の数字を見て、思わず目を丸くした。

――15,400円。

グラスワインとコース料理。

そりゃあ、それくらいになるか。

自然と手がバッグに伸びていた。

でも、財布を取り出すより早く、悠真がスッと現金を差し出した。

迷いのない手つきだった。

今までの居酒屋では、いつも割り勘。

せいぜい一人3,500円程度の気取らない食事。

だからこそ、余計に感じる。

この金額に込められた“意味”。

「ねえ、悠真。」

店を出て、夜風に当たりながら、私はふいに口を開いた。

「ん?」

「……ありがとう。」

ただ、それだけだった。

でも、その言葉の奥に、今日の気持ちをすべて込めたつもりだった。

すると悠真は、ゆっくりと私に顔を近づけてきた。

夜道の灯りの中、彼の瞳が真っ直ぐに私を見ていた。

「……セックスもできない女に、出せる金額じゃないよな。」
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